『エルピス』があぶり出す罪と罰の不均衡 長澤まさみ演じる恵那が気付いたメディアの原罪
恵那が思わずこみ上げてしまったのは、自分が冤罪に加担していたことに気付いたからだ。知らないうちに国家が行う殺人に関与していたこと。冤罪に限らず、報道キャスターとして都合の悪い真実に蓋をしてきた心の奥底には、焦りと虚栄心があった。恵那の発する「私には今、罰が当たっているんだと思います」は厳しすぎる懺悔だ。スキャンダルによって落ち目になったのではなく、ずっと前から自分は駄目になっていた。堕ちていく過程で傷付けてしまった人々や隠ぺいした事実、「自分がどれだけ狂っていたか」と語る一言一言は肺腑をえぐるようだった。
恵那が過去から復讐を受けたように、拓朗(眞栄田郷敦)にも消せない記憶があった。権力の闇を抽象的に糾弾するのではなく、個人の持つ性(さが)、あるいは業を徹底して掘り下げる『エルピス』だが、ことメディアに関しては、自らの罪を明らかにし正当な罰を引き受けるスタンスで臨んでおり、ある種の原罪意識が垣間見える。それなしで進めないかのような切迫した緊張感は、パンドラの箱を開けるというたとえがしっくりくる。反省の弁を口にしながら、過去と向き合わない斎藤(鈴木亮平)が現状追認の象徴であることに対して、内にも外にも行き場のない恵那と拓朗だからこそ、パンドラの箱を開けられるのかもしれないと思った。
■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv