『競争の番人』小日向文世に踊らされる“公取” 坂口健太郎から見えた“番人”の意味

『競争の番人』小日向文世に踊らされる公取

 15年前の談合をきっかけに、自ら命を絶った小勝負の父。その談合を裏で取り仕切っていた因縁の相手・藤堂(小日向文世)に直接挑もうとした小勝負(坂口健太郎)は、何者かに命を狙われてしまう。そこへ現れ、身を挺して小勝負を守った本庄(寺島しのぶ)。9月5日に放送された『競争の番人』(フジテレビ系)第9話はクライマックスの幕開け。小勝負、そして公取の“ダイロク”が巨悪へと挑む最終対決の火蓋が切って落とされることとなる。

 上層部からお咎めを受け、謹慎処分を言い渡されてしまった小勝負。その頃、楓(杏)は大森(黒羽麻璃央)から、本庄を刺した犯人はかつて楓が追っていた、公取に左遷されるきっかけとなった事件の犯人と同一人物である可能性を聞かされる。入院中の本庄のカバンから手帳とデスクの鍵を見つけた小勝負は、本庄がラクター建設の木下(石井正則)と会う約束をしていることを知り、その場所へと向かう。そこで木下から15年前のことを謝罪された小勝負。そして本庄が藤堂の不正を暴くためにラクター建設の情報を集めていたことを知らされるのだ。

 謹慎中の身でありながらも、大型再開発プロジェクトの入札の日取りが近付いていることを知って急いで調査に乗り出す小勝負。それをアシストするために藤堂の娘である「小津建設」の環(前田亜季)の協力を取り付ける楓。さらに談合が行われると思しき喫茶店に張り込みをする小勝負に、刑事時代のノウハウを活かして助け舟を出す楓と、楓の行動から状況を見抜いて手を差し伸べる風見(大倉孝二)たち“ダイロク”メンバー。小勝負&楓のバディ感と、“ダイロク”のチーム感が余すところなく発揮されるあたりはいかにも最終決戦にふさわしい空気と言わずにいられない。

 同時に、これまで警察から異動させられてきた楓を通して語られてきた警察と公取の組織としての違いが、今回は小勝負が「なぜ公取で藤堂を追うのか」という点をもって語られていく。警察ならば捕まえてしまえば終わりであり、公取ならば世の中に蔓延る談合などのあらゆる不正をなくせるかもしれない。つまり自分の父のような犠牲者が生まれることを止めることができる。単に悪をくじく小勝負の使命感は、まさにこのドラマのタイトルとなっている“番人”という言葉に符合する。その上で発せられる「できることなんてない。そんなものがあるならとっくにやっている」という言葉は重く、いかに藤堂が手強い存在であるかも物語るのである。

 さて、15年分の因縁が詰まりに詰まった戦いとなれば、複数話を跨いで描かれるのも納得だ。2話目に当たる今回のクライマックスで、不正に大きく関与していた人物が警察の手に渡る点は、第1話から第3話にかけて描かれたウエディングカルテルの一件とも通じるものがある。ラクター建設の樋山(平原テツ)を罠にかけて切り捨てる藤堂と、これを好機として外堀から攻め落としていきたい“ダイロク”。両者一歩も譲らぬ攻防戦はまさに見ものであろう。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、小日向文世ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
公式Twitter:@kyoso_fujitv
公式Instagram:@kyoso_fujitv

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