『ちむどんどん』の舞台・鶴見はどんな街? 「多文化共生タウン」になるまでの歴史

『ちむどんどん』鶴見はどんな街?

 多少気になるのは、乗り物の扱いだろうか。「リトル沖縄」がある場所は鶴見駅から歩いて15分ほどのところ。国道も川も渡った先で近くに線路はなく、暢子の下宿の部屋から踏切と電車の音が聞こえるのは演出上のデフォルメであろう。鶴見駅から歩ける距離ではあるが、基本的にその周辺はバス移動が主だった交通手段というイメージが強い。実際に1970年代前半にはすでに辺りを循環する市営バスも整備されていたはずだ。沖縄編では名護に向かうくだりや、やんばるを離れるくだりなど“バスに乗る”という移動行為がシンボリックに扱われていたが、東京・鶴見編では鶴見と銀座の往復でさえもシーンの切り替えによって処理されてしまっている。

 もっとも電車のない沖縄からやってきた暢子が、ひとりで鶴見にやってきて、それから鶴見と銀座を毎日通勤で行き来する(しかも銀座のシーンを見る限り、地下鉄の方から来ているようにも見える。乗り換えいらずの有楽町から歩くのではなく、新橋で銀座線に乗り換えているということか)というのはかなりハードルが高く、帰りの混雑した電車で「あきさみよー」となっている姿が容易に想像できる(見たかった)。そのあたりは大自然のロケーションを活かした沖縄編と、人工的な都会を見せる東京・鶴見編とのコントラストといったところだろうか。

 細かいことはさておき、『ちむどんどん』効果で「リトル沖縄」周辺や鶴見に観光客が増えているらしく(少なくとも筆者が生まれてから33年の間でそんな事態はまったくなかった)、鶴見っ子の端くれとしてはとても嬉しいことである。例年6月の最初の土日に行われている潮田神社の祭りは「リトル沖縄」周辺も賑わいをみせる地域の一大行事だ。ここ2年はコロナ禍で中止となっていたが、今年は開催されるのだろうか。鶴見には観光地と呼べるほどの特別なスポットがあるわけでもないが、そのぶん“人”が特別におもしろい。いわゆる“横浜”のイメージとは違う町の雰囲気を、どうせならば一番活気付いているタイミングで知ってもらいたいものだ。

■放送情報
『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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