Netflixで観ることができるアカデミー賞ノミネート映画 有力視されている3作品を紹介
『tick, tick... BOOM!:チック、チック…ブーン!』
『tick, tick... BOOM!:チック、チック…ブーン!』(2021年)は、ブロードウェイでロングラン上演され、『RENT/レント』(2005年)として映画化もされたミュージカルの原作者、ジョナサン・ラーソンの自伝的作品。ジョナサン・ラーソン役を演じるのは、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(2012年~)で知られるアンドリュー・ガーフィールドだ。レストランで働きながら、ミュージカルの作家を目指す青年ジョナサンは、自分が間もなく30歳になることに焦りを感じている。何も成し遂げないまま、年齢を重ねてしまうことへの恐怖。しかし焦るほどに曲作りは難航し、未払いの請求書が溜まっていくばかり。若き青年の空回りが本作の見どころだ。
ミュージカルに乗せて描かれる、まだ何者にもなっていない青年の毎日。どの曲もキャッチーでなじみやすく、何かを表現したいと燃えるジョナサンのエネルギーをよく表している。主人公にとって30歳という節目は、時限爆弾の爆発のタイミングのようであり、「チック、チック、ブーン!」というタイトルは彼の焦りそのものだ。個人的には、30歳で芽が出なくてもまだまだ時間はあるよとアドバイスしてあげたい気持ちになってしまうが、本作には全編に若者らしいきらめきや躍動感が充満していて、観客をぐっと盛り上げてくれるのが実に心地いいのだ。アンドリュー・ガーフィールドにしか演じられない、主人公のナイーブさや身勝手さにも共感してしまった。青春のきらめきがつまった作品であり、未見の方にはぜひオススメしたい。
ひとつ付け加えると、今回のアカデミー賞は、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)がノミネートされるなど、日本の映画ファンにとっても実に興味深いものとなっている。晴れの場に立つ濱口監督や俳優陣の姿もぜひ見てみたい。海外で人気の高い村上春樹作品の映画化というのも選出の理由のひとつだが、『ドライブ・マイ・カー』もまた「男性性」にまつわる物語として、他作品と共通するテーマ性を持っているように感じるのだ。並み居る強豪相手に、日本映画がどこまで健闘できるかも楽しみにしたい。
■配信情報
Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
Netflixにて独占配信中
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー
KIRSTY GRIFFIN/NETFLIX (c)2021 Cross City Films Limited/Courtesy of Netflix