興収で読む北米映画トレンド
20代監督のホラー映画、なぜ『SW』を圧倒? 『Backrooms』『オブセッション』が北米席巻

ハリウッドに「異変」が起きている。20代の新鋭監督による低予算のインディペンデントホラー映画2本が、『スター・ウォーズ』最新作を押しのけてしまった。
5月29日~31日の北米映画ランキングでNo.1に輝いたのは、A24の新作ホラー『Backrooms(原題)』。北米3442館にて週末興行収入8145万ドルという大ヒットスタートとなったほか、世界興収は早くも1億1800万ドル。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024年)の記録を大幅に上回り、A24史上最高のオープニング成績となった。
監督のケイン・パーソンズは弱冠20歳(!)、製作費はわずか1000万ドル。YouTuber出身のクリエイターが、A24の歴史を塗り替えたばかりか、北米週末興行ランキングで1位を獲得した史上最年少の映画監督となったのである。
さらに第2位は、公開3週目の『オブセッション 災愛』(7月17日に日本公開決定)。同じく製作費100万ドル規模の低予算ホラーだが、北米興収1億ドルを突破してFocus Featuresの歴代記録を更新したほか、世界興収も1億4800万ドルとなった。監督は26歳のカリー・バーカー、同じくYouTube出身である。
通常、映画の週末興収は公開週末をピークとしてじわじわ下がっていくものだが、『オブセッション 災愛』は2週目に前週比プラス39.3%、3週目にプラス10.2%という異例の推移を見せている。非ホリデーシーズン作品としては『E.T.』(1982年)以来といわれるほどのヒットで、海外市場でも週末成績は39%上昇している。
対照的に、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は公開2週目ながら第3位にランクダウン。週末興収は2500万ドル、前週比マイナス69.4%という数字となった。世界興収は2億4656万ドルと悪くないが、製作費1億6500万ドルを費やした『スター・ウォーズ』7年ぶりの新作映画としてはあまりにも厳しい。

もともと今夏は『スター・ウォーズ』のみならず、ディズニーが『トイ・ストーリー5』と『モアナと伝説の海』実写版、ソニー/マーベルが『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』、DCが『スーパーガール』、ユニバーサルが『ミニオンズ』新作と、各社の人気IPを相次いで投入することで注目を集めていた。
しかしながら、サマーシーズン序盤の映画館を熱狂させているのは、YouTube出身クリエイターによる低予算のインディペンデントホラーだ。いったい、何が起きているのか。
『Backrooms』は、家具店の店主(キウェテル・イジョフォー)が、店内で奇妙な空間へ通じる扉を見つけたのちに失踪したことから始まる物語だ。扉の向こうに広がるのは、どこまでも続く無個性な部屋――。店主の担当セラピスト(レナーテ・レインスヴェ)は、消えた店主を探して扉の向こうへ足を踏み入れる。

本作の原点は、「The Backrooms」というインターネット発の都市伝説(クリーピーパスタ)だ。黄色い壁紙、蛍光灯、カーペットの部屋をとらえた不穏な画像が匿名掲示板に投稿されたことをきっかけに、さまざまなユーザーがオンラインで物語を付与していき、一種の怪談として世界が拡張されてきた。
監督のケイン・パーソンズは、2022年に16歳の若さで短編『The Backrooms (Found Footage)』をYouTubeにて公開し、大きな反響を受けた。その後もシリーズを拡大し、多数の作品を製作してきた、いわば「The Backrooms」を有名にした立役者である。A24が長編映画化を打診したのは、パーソンズが17歳になって間もないときだった。
匿名掲示板やYouTube、TikTok、Xといったオンラインを中心に広がった都市伝説の映画化とあって、観客も若者が中心だった。全体の88%が35歳未満であるほか、18~24歳が43%、25~34歳が25%、13~17歳が20%で、平均年齢は25.2歳。最多層は25歳未満の女性だというから、とにかく若者の注目が集まった企画だったのだ。
A24は「The Backrooms」のファンコミュニティを中心にプロモーションを展開しつつ、映画ファンにはA24ブランドを強調する作戦に出ており、これが奏功した。調査によると、観客の半数以上が「A24作品だから」映画館に足を運んだと答えており、都市伝説とA24、両方のファンが興味を抱いたことを示している。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア89%・観客スコア74%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B-」評価。観客からは賛否両論だが、これはホラージャンルではよくあることで、しかも原案の都市伝説に思い入れがある観客が多いほど必然的というべきだろう。




















