宇野維正の興行ランキング一刀両断!
アカデミー賞ノミネート作品、授賞式の前に日本で観られる作品と観られない作品
先週末の動員ランキングは、『劇場版 呪術廻戦 0』が土日2日間で動員12万1000人、興収1億8400万円をあげて6週連続で1位となった。2月27日(日)までの公開から66日間の累計で、動員は866万9486人、興収は121億1482万7660円。今週末以降、『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』と有力作品の公開が続くのでランキングのトップになるのは先週末が最後となるだろうが、結局クリスマスシーズンから春休みシーズンにかけて通算8週間1位と、首位をほぼ独占することとなった。
トップ10に初登場したのは3位の『ナイル殺人事件』と9位の『ドリームプラン』。ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹をテニス世界チャンピオンに育てた父親リチャード・ウィリアムズをウィル・スミスが演じる『ドリームプラン』はアカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など6部門にノミネートされている注目作で、週末より一足早く祝日の2月23日に公開されたが、公開から5日間で動員6万1497人、興収7808万9560円となかなか厳しい出足となっている。
近年、アカデミー賞では作品賞にノミネートする作品の数を10作品まで増加させていて、先週末の動員ランキングのトップ10では『ドリームプラン』のほか『ウエスト・サイド・ストーリー』と『ドライブ・マイ・カー』がノミネート作品となっている。まだ日本で公開されていないのは『ベルファスト』と『ナイトメア・アリー』と『リコリス・ピザ』の3作品だが、そのうち『ベルファスト』と『ネイトメア・アリー』は授賞式(3月27日)直前の3月25日に公開されるので、10作品中なんとか9作品がギリギリ授賞式前に観られることになる。
一方、北米ではノミネートされた10作品すべてと、主要賞にノミネートされたほとんどの作品が既に配信で視聴することができる。例年、アカデミー賞直前のこの時期は、各映画会社が業界の内外で精力的にノミネート作品のプロモーションを繰り広げ、映画ファンは劇場に足を運んで気になる作品の真価を確かめてきた。しかし、今やその気にさえなれば、授賞式の前にすべての作品(有料配信の作品もあるが)を自宅のリビングルームで鑑賞することができるわけだ。そのことが、近年減少傾向が続いているアカデミー賞の視聴者数にどのように反映するかはわからないが、アカデミー賞の楽しみ方そのものが大きく変化したと言っていいだろう。