海外では酷評も一見の価値あり? 『レディース・ファースト?!』の単純すぎる男女逆転劇

『レディース・ファースト?!』の社会的役割

 サシャ・バロン・コーエン主演、ロザムンド・パイクが共演したコメディ映画『レディース・ファースト?!』がNetflixでリリースされた。本作は、同じくNetflixで2018年から配信されているフランス映画『軽い男じゃないのよ』のアメリカ版リメイク作。男女の社会的立場が逆転した異世界へと迷い込んだ傲慢な男性の戸惑いと奮闘を描き、現実の男性優位社会における性差別の構造を鏡写しにすることで風刺する一作だ。

 そのユニークな設定に加え、主演のサシャ・バロン・コーエンが得意とする過激なお下劣ギャグが随所に炸裂しているところが面白い本作『レディース・ファースト?!』だが、海外の批評家からの評判はあまり芳しくないようだ。「単にステレオタイプを入れ替えただけ」、「退屈で底の浅い趣向だ」などといった厳しい論調が少なくないのである。8年前のジェンダー観をベースにしていたり、展開が予想できるような分かりやすいストーリーであるため、その評価は頷けるところもある。

 しかし、果たして本作が提示した内容は、それほど時代に遅れているのだろうか。ここでは、現在の社会において、本作の提示するものの役割や価値について考えていきたい。

 サシャ・バロン・コーエンが演じる主人公ダミアン・サックスは、男性上位的な思想を持つ人物だ。大きな広告代理店の重役という肩書きを持ち、その権力や財力を背景に女性を品定めして、公私混同の人事を会社に要求している。そんな不誠実な態度で仕事をこなしている彼は、ある日、ビール会社「ギネス」の女性向けの宣伝を担当するため、女性のクリエイティブ・ディレクターを雇うことにする。

 晴れがましいポストを得た、勤勉なシングルマザーであるアレックス・フォックスは、当初はついに自分の功績と才能が認められたと喜んでいた。しかし、宣伝プランの会議において、彼女は自分が“名ばかり”のディレクターだったということを思い知らされることになる。彼女による女性目線の意見は無視され、会議はダミアンの提案する蔑視的な企画に固まっていく。さらには、昇進はただ“体裁を整えるため”だというダミアンの発言も耳にしてしまう。散々な仕打ちに傷ついたアレックスは社を辞めると宣言し、会社を後にするのだ。

 その後を追いながら、さらに女性蔑視的な発言を繰り出し、ぶつけていくダミアン。その途中で他の女性に目移りした瞬間、街路標識の柱に頭を強打して、意識を失うのだった。目を覚ますと、世界は一変。男性と女性の社会的立場が完全に入れ替わっていることに気づくのである。

 広告代理店に戻ったダミアンを待ち受けていたのは、かつて清掃員だった女性がトップに就任し、以前のダミアンのオフィスを、幹部になったアレックスが使用しているという、序列の逆転だった。男性たちは格下げされ、組織の意思決定権は完全に女性の集団へと移行している。

 実家にもその変化は及んでいた。ダミアンの母親や妹がソファーにくつろいで何もしない一方で、父親や妹の夫は、女性たちの顔色をうかがいながら家事や美容に専念し、従属的に振る舞うことを内面化させられているのだった。ローマ教皇が女性になっていたり、街角やテレビが水着姿で半裸を晒した男性たちの広告で溢れているのも、男性への評価が様変わりしていることを視覚的に表現している。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる