『カムカムエヴリバディ』稔から思いを継承したるい 松村北斗の再登場は珠玉の演出に

『カムカム』稔から思いを継承したるい

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第97話は感情が理解を追い越していく、視聴者をも不思議な体験に誘うような回だ。

 終戦記念日である8月15日は、霊がこの世に戻ってくると言い伝えられているお盆の時期。ひなた(川栄李奈)はNHKラジオ英語講座講師・平川唯一(さだまさし)に、るい(深津絵里)は父・稔(松村北斗)に初めて対面する。ひなたが雉真家で見つける安子(上白石萌音)とるいの名前が入った「カムカム英語」のテキスト、そしてるいが抱える雉真稔の名前が残った英語辞書、2つのアイテムがそれぞれ平川と稔に巡り逢わせるアイテムとして機能している。

 朝ドラにおいて亡くなったキャラクターがヒロインの前に再び登場するというのはそこまで珍しくはない(特に大阪制作)。だが、今回の『カムカム』における再登場は、脚本を手掛ける藤本有紀、そして制作陣の思いが詰まった珠玉の演出である。正午のサイレンが鳴り、るいたちが黙祷を捧げるのが、ドラマがスタートして4分過ぎ。そこからドラマ内における1分ほどの黙祷の時の中で、ひなたは平川と、るいは稔と思いを交わす。

 2人に共通しているのは、戦争という時代を経験してきたこと。海外に向けた玉音放送の英語放送も担当している平川は、日本が弱り切った戦後の時代に英語を通して明るい楽しい暮らしを取り戻してほしいという思いから、ラジオの英語講座の講師を引き受けた。「証城寺の狸囃子」は日本を明るくするのにぴったりな曲だ。

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