なにわ男子 長尾謙杜の鮮烈な芝居 『となりのチカラ』『HOMESTAY』で難役を次々と好演
ここのところ立て続けに難役に抜擢されている印象があるのが、なにわ男子の長尾謙杜だ。
『となりのチカラ』(テレビ朝日系)では、認知症の祖母・柏木清江(風吹ジュン)と2人暮らしの高校生・託也役を担当。第2話にしてヤングケアラー問題に切り込んだ。
震災で両親を亡くしてから自分のことを育ててくれた祖母への感謝、自分自身の宿命をなんとか受け入れようとしながら「自分さえ我慢すれば……」という気持ちと、「なんで自分だけが……」と自身の運命を呪い反発しようとする気持ちの狭間で揺れ動く少年の繊細で、ちょっとやそっとでは立ち入られない複雑な内面を丁寧に表現した。
祖母の尊厳を傷つけまいと、時には自身が強盗の振りをする時、彼の尊厳はもちろん蔑ろにされている。そんな時の彼の去り際の背中はとても悲しい。あの若さにして、背中で寂しさや哀愁を感じさせることができるのは本当に見事としか言いようがない。祖母をできるだけ一人にしないようにと、彼は大学進学も教師の夢も諦めようとする。誰も助けてはくれない、自分一人でどうにかするしかない……憔悴し切った託也は静かにずっと世間に諦め絶望している。
そんな彼が自身にかけられた“いい子”の呪縛に抗い、主人公のチカラ(松本潤)にこれまで決して誰にも明かすことのなかった、おそらく自分の中で言葉にしたことさえなかった不満や怒り、本音をぶちまけるシーンは圧巻だ。それを口にすることで自分が楽になろうとなんてしていないどころか、反対にその罰を受けることさえ厭わないような託也の、それでも抑えきれずに漏れ出た言葉の生々しさ、切実さに心打たれた。