『となりのチカラ』長尾謙杜が見せた“いい子”でいたことの苦悩 遊川和彦の“力技”が再び

長尾謙杜が見せた“いい子”でいたことの苦悩

 松本潤が主演を務める『となりのチカラ』(テレビ朝日系)が1月27日に第2話を迎えた。

 まず、この第2話で示されたのは、主人公・チカラ(松本潤)が1話毎に同じマンションに住む住人たちの問題に介入していくということ。第1話で描かれた木次家の虐待問題に続くのは、認知症を患った柏木清江(風吹ジュン)を祖母に持つ託也(長尾謙杜)のヤングケアラー問題。さらに、託也は両親を震災で津波に流されている。デリケート過ぎるこれらの問題に、チカラはまたしても首を突っ込んでいくのだ。

 注目は、嵐となにわ男子の共演となる松本潤と長尾謙杜の組み合わせだろう。松本はリリースコメントの中で長尾について「好青年」と紹介し、デビューしたての爽やかな空気に癒されていると述べている。そんな長尾が演じる託也は、ヤングケアラーとしての悩みを抱え込んでいる、どこか影のある少年。死のうとする清江をチカラがおぶってきた夜、託也は「いい子」という言葉をスイッチに心に溜まっていた膿を一気に吐き出す。

 チカラの前で曝け出すのは、認知症になってしまった祖母への苛立ちと幸せそうに暮らすチカラの家への嫉妬。祖母と約束したいい子でいることが託也を縛り、内に秘めた感情との矛盾が彼を苦しめていたのだ。言葉の刃は鋭いが、相反して託也本人の表情は悲しみに染まっている。震災から11年こらえていた涙ーーチカラは託也が泣き止むのをただそばで見守ってあげるのだった。

 第1話同様に、根本的な問題は何も解決していない。認知症への対策も家中に付箋を貼り、病気の進行を抑えるために毎日ピアノを弾くという、はじめの一歩に過ぎない。ただ、チカラの娘・愛理(鎌田英怜奈)が作文で発表していたように、こんなチカラのような他人のために(言い方を変えれば、自分の問題に向き合わずに)チカラになろうとする人が増えれば、この世界はちょっとだけ良くなるーーそう思わせる、魔法のような力技が遊川和彦作品にはある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる