『ケイ×ヤク』『ファイトソング』で頼れるアネキ熱演 3つの視点で振り返る栗山千明の歩み

 捜査官役が多いと必然的にスーツや堅めの衣装が多くなるが、栗山は制服とも縁が深い。『キル・ビル Vol.1』や『六番目の小夜子』(NHK教育)の中高生、映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』の自衛隊教官、『図書館戦争』シリーズの図書隊、『HEAT』(カンテレ・フジテレビ系)の消防団員などである。モデルとして活動しているだけあって、ありきたりな制服も栗山が着るとフォトジェニックになる仕組みはいまだによくわからないが、厳然とした事実である。こうして見ると硬派専門なイメージを抱くかもしれないが、このことが逆に、次に述べるようなギャップのある内面を効果的に引き立てることにもつながっている。

 『バトル・ロワイアル』や「The MTV Movie Awards 2004」のBest Fight賞を受賞した『キル・ビル Vol.1』でのバトルシーン、刑事ドラマでの機敏な動作からアクション女優の印象も強い栗山だが、アニメ好きなオタク女子の顔を持っており、それが演技に生かされていると思える場面が散見される。映画『鴨川ホルモー』の楠木ふみはメガネをした理系女子で、『特急田中3号』(TBS系)の目黒照美は鉄オタの派遣社員だった。最近では『でも、結婚したいっ!〜BL漫画家のこじらせ婚活記〜』(カンテレ・フジテレビ系)や『ラブコメの掟〜こじらせ女子と年下男子〜』(テレビ東京系)で、BLをこよなく愛する腐女子や男性経験なしの恋愛マスターに扮する。クールビューティーと称されながら、理想のタイプを『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲルと公言する栗山だけに、どれもツボを押さえた親近感のあるキャラクターになっている。実写版『モモウメ』(Hulu)のおしゃクソ姉さんでも、栗山の作品理解度の高さが光っている。

 制服に身を包んで職務を全うする一方、プライベートでアニメや趣味に没頭する生き方は、現在では全く珍しいものではなく、栗山は今の時代を先取りしていたように見える。キャリアを通して様々な女性を演じてきた栗山は、等身大の役柄を演じる方向にシフトしつつある。『ケイ×ヤク』の莉音と『ファイトソング』の弓子は、栗山がこれまで積み上げてきた演技の延長線上にあり、栗山の現在地を知ることができる役だ。お酒好きで気さくな一面もある栗山。若手俳優を見守る“アネキ”の今後に期待したい。

■放送情報
プラチナイト モクドラF『ケイ×ヤクーあぶない相棒ー』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週木曜23:59~放送
出演:鈴木伸之、犬飼貴丈、徳井義実、萩原みのり、松本利夫、吉村界人、栗山千明(特別出演)、眞島秀和、板尾創路
脚本:酒井雅秋、鹿目けい子、三浦駿斗、小川眞住枝
監督:波多野貴文、白石達也、蔵方政俊、日高貴士
原作:薫原好江『ケイ×ヤクーあぶない相棒ー』(講談社『Palcy』連載中)
主題歌:OCTPATH「ITbS A BOP」「Be with you」(YOSHIMOTO UNIVERSAL TUNES.)
チーフプロデューサー:岡本浩一(ytv)
プロデューサー:小島祥子(ytv)、斎木綾乃(吉本興業)、中曽根広樹(ギークピクチュアズ)、齋藤大輔(ザフール)
制作会社:ギークピクチュアズ
制作協力:吉本興業
制作著作:読売テレビ
(c)読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/keiyaku/
公式Twitter:@keiyaku_drama
公式Instagram:@keiyaku_drama

■放送情報
火曜ドラマ『ファイトソング』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:清原果耶、間宮祥太朗、菊池風磨、東啓介、藤原さくら、若林時英、窪塚愛流、莉子栗山千明、橋本じゅん、戸次重幸、 稲森いずみ
脚本:岡田惠和
プロデューサー:武田梓、岩崎愛奈
演出:岡本伸吾、石井康晴、村尾嘉昭
編成:宮崎真佐子、中西真央
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fight_song_tbs2022/
公式Twitter:@fightsong_tbs
公式Instagram:fightsong_tbs

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