『ケイ×ヤク』『ファイトソング』で頼れるアネキ熱演 3つの視点で振り返る栗山千明の歩み

 『ケイ×ヤクーあぶない相棒ー』(読売テレビ・日本テレビ系)で捜査官の央莉音を演じる栗山千明。公安の捜査官である莉音は、国下一狼(鈴木伸之)の先輩バディで、指定暴力団「峰上組」の若頭・英獅郎(犬飼貴丈)の姉という、物語の鍵を握るキャラクターだ。姿を消した莉音の行方を追って、一狼と獅郎は禁断のタッグを組む。また『ファイトソング』(TBS系)では、芦田春樹(間宮祥太朗)の所属事務所のマネージャー伊達弓子役で出演。自身が見出した芦田に奮起を促すため、2カ月という期限を設けてヒット曲の制作を命じる。

栗山千明
『ケイ×ヤクーあぶない相棒ー』の栗山千明

 世話好きでサバサバした性格の莉音と姉御肌の弓子には共通点がある。自立したキャリアを歩み、凛としたオーラを発するキャラクターは、栗山の歩みと二重写しに重なる。少女時代の栗山の夢はショーモデルになることだった。女優の道に進んだ10代の栗山は、映画『死国』でデビューし、2000年公開の『バトル・ロワイアル』、2003年のクエンティン・タランティーノ監督作『キル・ビル Vol.1』でその名を世界に知らしめた。エキゾチックな容姿も手伝ってエキセントリックな役柄も多かったが、以後、“クールビューティー”というイメージにたがわず活躍してきた。

 栗山のキャリアを振り返ると、「刑事ドラマ」「制服」「オタク気質」というキーワードが浮かんでくる。それぞれについて説明する。2010年代以降、主戦場をテレビドラマに移した栗山。多彩なジャンルに挑む中で、刑事ドラマは栗山の個性が発揮される場所になってきた。『熱海の捜査官』(テレビ朝日系)の北島紗英、『劇場版SPEC』シリーズの青池里子、『ATARU』(TBS系)の蛯名舞子、第4シリーズから登場した『遺留捜査』(テレビ朝日系)の神崎莉緒、『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』(BSテレ東)の楯岡絵麻、『24 JAPAN』(テレビ朝日系)の水石伊月、そして『ケイ×ヤク』の央莉音などである。

 刑事あるいは捜査官として、役柄上、数々の難事件を担当してきた栗山だが、どれ一つとしてキャラかぶりがないのは驚異的だ。キャラが濃すぎる青池は例外としても、たとえば、コメディ要素の強い『熱海の捜査官』の紗英と『ATARU』の舞子を比較すると、独自の判断で突っ走る共通項はあるにしても、紗英がオダギリジョー演じる星崎におかまいなく捜査を進める暴走型なら、舞子はチョコザイ/アタル(中居正広)に振り回されながら、上司の沢(北村一輝)を振り回す自己中心型という違いがある。また、ともにクールな捜査官である楯岡絵麻と『24 JAPAN』の水石は、楯岡が面倒くさいけど憎めないタイプであるのに対し、水石は獅堂現馬(唐沢寿明)と男女の関係になり、災厄をもたらすなどこじらせる方向が異なっている。当然なのかもしれないが、世間的に「刑事ドラマ」と一括りにされがちな中で、ここまでバリエーションを生み出せるのは、ひとえに役作りの賜物と言っていいだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる