『潜水艦カッペリーニ号の冒険』は今こそ観たい正月ドラマに 眩しく映る異文化交流の形 

『カッペリーニ号の冒険』が描いた異文化交流

 しいて触れるならば、イタリア人=陽気ですぐ歌い出すしいい加減で、女性を見ればすぐ恋に落ちるという典型的なステレオタイプが物語の前提条件として横たわっているところが少々気に掛かるところだろうか。それでもかえって、そのあからさまな見せ方がこのドラマのオールドファッションな雰囲気を底上げしていることは間違いなく、同時に二宮演じる速水をはじめとした当時の日本人の堅物さとの対比と考えれば、どちらも極端にデフォルメされたもの同士としてキャラクター造形のバランスを保つ働きを見せる。つまるところ、あくまでこのドラマが見せたいことは、戦争によって分断された二つの異なる文化が、“お互いを知る”というシンプルな一点によって結びつけられるということであろう。

 中盤にイタリア兵たちが作る料理を前に、早季子は「いろんな国の料理を遠慮なく作って、遠慮なく食べられる世の中に、早くなるといいな」とつぶやく。このフレーズはどこか、現在放送中のNHKの連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』の「安子編」のなかで繰り返し語られた「“日向の道”を歩いてほしい」という願いと通じるものがある。戦時では不可能だった外国との文化的な交流が、75年の月日の中ですっかり当たり前のものとなり、そしてこの2年でまた物理的な距離が生じることになった。

 自由に国と国とを往来し、さまざまな人とめぐり逢い、さまざまな文化と直接関わり合う。そうした現代人の望みを描写する上で最もシンパシーのおきやすいところが戦時ドラマというわけだろう。そこで描かれた時代から現代に至るまではひたすら前向きで急進的な変化がもたらされただけに、ここからはその中で取りこぼされた部分を補いながら着実な変化が求められていくべきである。いずれにせよ、どんな時代にせよ、文化的にも人間的にも“お互いを知る”チャンスは何度でも開かれていくはずだ。

■配信情報
『潜水艦カッペリーニ号の冒険』
Tver、FODにて配信中
出演:二宮和也、有村架純、愛希れいか、ペッペ、ベリッシモ・フランチェスコ、パオロ、音尾琢真、今野浩喜、堤真一ほか
案内人:池上彰
原作:ホイチョイ・プロダクションズ
脚本:澤本嘉光
監督:馬場康夫
プロデュース:岩田祐二、蔵本憲昭
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/DramaCappellini/index.html
公式Twitter:@Cappellini_cx
公式Instagram:@Cappellini_cx

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