『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』海外での評価をおさらい 物語がさらに進化?
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『スパイダーマン』シリーズ最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が日本で2022年1月7日に公開される。監督はシリーズ前2作と同じくジョン・ワッツが担当。北米では2021年12月17日に公開され、多くのメディアで絶賛されている。ネタバレがないように論評のポイントをご紹介し、見どころを分析したい。
前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で敵のミステリオ(ジェイク・ギレンホール)を倒したピーター・パーカー(トム・ホランド)だが、タブロイド紙デイリー・ビューグルが彼の遺した映像を公開しピーターがスパイダーマンであると報じる。殺人の容疑をかけられたピーターの生活は一変。ガールフレンドのMJ(ゼンデイヤ)、親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)らにも影響が及び、ピーターはドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に頼み、人々の記憶から自身がスパイダーマンであることを消す呪文を唱えてもらう。しかし呪文は失敗して“マルチバース”(いくつもの並行世界)が出現し、他ユニバースのヴィランたちを呼び寄せてしまう。
米批評サイトRotten Tomatoesでは批評家スコア94%を記録(1月1日時点)。全体として肯定的な意見が多い。たとえばBBCは「スパイダーマン映画のいわゆる1部から8部を参考にするのはファンのノスタルジックな愛情に頼っているが、エモーショナルな深さと広がりを増し、新しい映画へと高めている」と記し、The Washington Postは今作を「ファンにとっては、青色と赤色の光沢のあるラッピングペーパーに包まれ、蜘蛛の糸で蝶結びされた贅沢なクリスマスプレゼント」と表現した(日本では正月明けのプレゼントとなるが)。
各論評でよく触れられた「ファンサービス」と「ピーターの内面の成長」の観点からさらに内容を見てみよう。
まず「ファンサービス」から。ご存知のとおり歴代ヴィラン何名かの登場が注目の的となっており、海外メディアも往年のスパイダーマンファンが楽しめる演出に興奮を表している。
ただ、彼らを単なるファンサービスとして登場させるだけでは多くの観客の心をつかめないだろう。ともすれば、それぞれ思い入れがあるヴィランの扱い方に批判が出る恐れもあるが、批評家からはおおむね好意的な意見が見られる。
支持につながったのは、ストーリーそのものの満足度の高さにありそうだ。別ユニバースからたくさんの登場人物を参加させるとなると、複雑でわかりにくくなる心配もある中、上手くまとめたジョン・ワッツ監督や脚本のエリック・ソマーズとクリス・マッケナの手腕が賞賛されている。Guardianは、「ジョン・ワッツは多くのヴィランを連れ戻す課題があったが、巧みに練った冒険譚を推し進め、たしかな仕事をしてファンを喜ばせた」とファンサービスを原動力にして話を前進させていると評価した。BBCも「昔の映画を楽しむのではなく、より正確にはマーベル・ユニバースもしくはマーベル・マルチバースへの新たな道を開く」と、ただ懐古主義の作品ではなく未来志向であると示唆している。