『悪の花』から『賢い医師生活』まで ライター陣が選ぶ、今観るべき2021年の韓国ドラマ

今観るべき2021年の韓国ドラマ

Cinemaruko(シネマルコ)編

1.『怪物』
2.『D.P. -脱走兵追跡官-』
3.『静かなる海』
4.『イカゲーム』
5.『悪の花』

 『パラサイト 半地下の家族』(2020年)がアカデミー賞を受賞して以来、「韓国のエンタメ=おもしろさは国際レベル」というムードが世界的に認知され、その勢いは加速している。日本では、去年の『愛の不時着』『梨泰院クラス』の大ヒットの流れを受け、今年前半は『ヴィンチェンツォ』がヒットをとばし、後半は『イカゲーム』が話題を席巻した。

 個人的に2021年は、サスペンス映画が大豊作な年だった。その理由の1つに、“韓国界のゴールデングローブ賞”と呼ばれる「百想芸術大賞」の受賞作が、続々と日本で配信・放送されたことがあるだろう。2021年のノミネート作品は、サスペンスドラマの秀作揃いで、『ヴィンチェンツォ』『ペントハウス』『人間レッスン』『悪霊狩猟団:カウンターズ』など。なかでも作品賞を受賞した『怪物』と5部門で候補になった『悪の花』に強い印象を受けた。

『怪物』

 韓ドラが得意な“人の心の闇”に迫る『怪物』は、田舎町を舞台にした心理サスペンス。女子大生連続殺人事件を二人の警官が追跡する、ポン・ジュノの『殺人の追憶』を思わせる物語だ。話が進むにつれ登場人物全員が容疑者に見えてくるが、意外と早い段階で犯人が明かされる。それでもさらに謎は深まり、「こんなに緻密な脚本があるのか」と、うちのめされた。主演のシン・ハギュン、『地獄が呼んでいる』のキム・シンロクなど、役者たちの演技も「怪物」級。韓国で「2021年を代表する傑作」という評判に納得だ。

『悪の花』

 『王の男』のイ・ジュンギが主演する『悪の花』は、夫婦愛がモチーフのラブ・サスペンス。壮絶な過去を隠して「完璧な夫」として生きるヒソンと、彼を愛する妻ジウォンとの葛藤が描かれる。一見、ありがちにも思える設定だが、この作品の凄さは予想をはるかに超えてくる展開。「次は多分こうなるだろう」と思うと、意外な方向に話がすすみ、ラストまで緊張の糸がとぎれない。ヒソンを演じるイ・ジュンギも、主人公の二つの顔を繊細な演技で巧みに演じ分け、感動を盛り上げた。

『イカゲーム』

 秋以降は、Netflixの世界的な快進撃が本格化。筆頭はもちろん『イカゲーム』だ。「デスゲーム」というシンプルな話を軸に、ポップなアートと泣ける人情ドラマで観る者を惹きつけ、コン・ユ、イ・ビョンホンのカメオ出演という楽しさも忘れない。360度隙のないエンタメスリラーで、2022年の「ゴールデングローブ賞」にノミネートされるという快挙もうなずける。個人的にはセビョク役のチョン・ホヨンのように、新しい才能を発掘してエンタメ界をパワーアップするシステムに感心した。

『D.P. -脱走兵追跡官-』

 一方、社会派ドラマでは、『D.P. -脱走兵追跡官-』がくれた感動が忘れられない。韓国の「軍隊いじめ」を描いた衝撃作だが、主人公のアン・ジュノは脱走兵士をつかまえる“探偵”のような役どころ。そのため、追跡劇としてのアクションシーンや人情話もあり、フラットな立場で兵士たちの背景を見つめられる。軍隊の話を超えて「いじめ」を生む社会構造まで浮き彫りにする本作は、NYタイムズが選んだ「今年最高のドラマシリーズ“10選”」の栄光に輝いている。

『静かなる海』

『静かなる海』

 年末には、SFサスペンスドラマの『静かなる海』が登場した。コン・ユvsペ・ドゥナの2大スターが共演し、『母なる証明』のパク・ウンギョが脚本を手掛けた衝撃作だ。環境汚染で水が枯渇した未来で、謎の「サンプル」を求めて、月に派遣された研究者たちの物語。宇宙基地のどこかに「何かがいる!」という恐ろしさは、リドリー・スコットの『エイリアン』のよう。その「何か」が判明すると、今後は人類の生存のために犠牲になった「ある存在」が焦点になる。クオリティの高い映像や哲学的なメッセージ、ロマンが漂う驚きのラストに、今後のドラマの新たな可能性を感じた。

■リリース情報
『悪の花』
DVD-BOX発売中
出演:イ・ジュンギ、ムン・チェウォン、チャン・ヒジン、ソ・ヒョヌ
演出:キム・チョルギュ
発売・販売元:エスピーオー
2020年/韓国/音声:オリジナル韓国語・字幕:日本語
(c)STUDIO DRAGON CORPORATION
公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/dc/k/akunohana/

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