『恋慕』から『マイネーム』まで 2021年に活躍した韓ドラヒロインを振り返る

2021年に活躍した韓ドラヒロインたち

 2021年の韓国ドラマの中でとりわけ異彩を放ったのが、安心感半端ない実力派から期待の若手まで、注目の女優たちが演じた力強くも、ひと筋縄ではいかない主人公たち。スリラーからアクション、時代劇とそのジャンルも革新的で多岐にわたり、見始めたら止まらなくなるクセになる作品ばかり。今回はそのヒロインたちに注目してみた。

『調査官ク・ギョンイ』イ・ヨンエ×キム・ヘジュン

調査官ク・ギョンイ | オフィシャル予告編 | Netflix

 まずは、エミー賞受賞のBBCアメリカ制作ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』のアジア版との触れ込みで10月にスタート、最終話が12月13日にNetflix配信されたスリラーコメディ『調査官ク・ギョンイ』。『キリング・イヴ』でサンドラ・オー(『グレイズ・アナトミー』)が演じた捜査官イヴに当たるのが、元刑事の保険会社調査員ク・ギョンイ。演じるのは、『宮廷女官チャングムの誓い』や『師任堂(サイムダン)、色の日記』で知られ、14年ぶりの映画復帰作『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』(2019年)でも壮絶な演技を見せたイ・ヨンエだ。

『調査官ク・ギョンイ』(画像はJTBC公式サイトより)

 伸びっぱなしの髪をひっつめ、ジャージにコートを羽織る調査官ク・ギョンイは、その疑り深い性格から、刑事時代には容疑者となった夫チャン・ソンウ(チェ・ヨンジュン)を“死に追いやった”という噂もあるほど。その夫の事件がトラウマとなり、ビデオゲームとアルコールで廃人と化していたが、連続不審死をきっかけに仕事を再開する。彼女の思考は時に演劇的、マンガ的なデフォルメで表現され、“第4の壁”を破ってこちらに話しかけてくることも。このキャラクターもまた、気品を感じさせるイ・ヨンエのイメージを打ち破るものとなった。

『調査官ク・ギョンイ』

 そんなギョンイが追うのは、罪深き者たちを事故や自然死に見せかけて秘かに殺害する連続殺人犯ケイ。『キリング・イヴ』でいえば、ジョディ・カマー(『最後の決闘裁判』『フリー・ガイ』)が演じた暗殺者ヴィラネルに当たる。演じるのは、NetflixオリジナルシリーズのKゾンビ時代劇『キングダム』で強欲な王妃を怪演したキム・ヘジュン。名優キム・ユンソクの初監督映画『未成年』(2019年)では未熟な大人たちに翻弄される女子高校生を演じて青龍映画賞新人女優賞を受賞したが、今作ではこれでもかと大人たちを翻弄し、さらに“壊れた”サイコキラーと化していく。

 ケイに最も翻弄されるのは、慈善団体「青い子供財団」を運営し、長男のホ・ヒョンテ(パク・チビン)をソウル市長に、ゆくゆくはそれ以上に(大統領?)と目論んでいるヨン局長だ。演じるのは、『賢い医師生活』のジョンウォン(ユ・ヨンソク)の母ロサ役をはじめ、“国民のお母さん”とも呼ばれるキム・ヘスク。また、ギョンイを“表舞台”に引っ張り出す保険会社のチーム長のナ・ジェヒを、同じく『賢い医師生活』のイクジュン(チョ・ジョンソク)の妹のイクスン役で知られるクァク・ソニョンが好演。破格なヒロイン、ギョンイの言動を唯一掌握することのできるジェヒとのシスターフッドは見どころの1つともなる。

 追う者と追われる者が実は似た者同士で、お互いの行動原理を理解しながら騙し合うスリリングな展開は確かに『キリング・イヴ』的。だが、ケイがくだす私刑、「罪深き者は成敗されて当然」とする論理は『地獄が呼んでいる』とも相通じるものがある。

『ヴィンチェンツォ』チョン・ヨビンVSキム・ヨジン

『ヴィンチェンツォ』

 これまでにないヒロインといえば、『ヴィンチェンツォ』の女性弁護士ホン・チャヨンもその1人だろう。人権派で知られた貧しくも誠実な弁護士の父ホン・ユチャン(ユ・ジェミョン)を殺された彼女は、ヴィンチェンツォ(ソン・ジュンギ)とともに復讐を決意する。演じたのは、映画『楽園の夜』やドラマ『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』のチョン・ヨビン。2022年には『人間レッスン』の脚本家チン・ハンサイと組む『Glitch(英題)』が待機している。

 父の法律事務所「藁」を受け継いだチャヨンとヴィンチェンツォの前に立ちはだかるのが、サイコパスのチャン・ジュヌ(オク・テギョン)が君臨する財閥バベルグループと、元検事の「ウサン法律事務所」の“踊る弁護士”チェ・ミョンヒ(キム・ヨジン)だ。冷酷無慈悲、したたかで頭の切れるミョンヒは、イタリアンマフィア流の「悪をもって悪を制す」を実行するチャヨン&ヴィンチェンツォが闘う相手として申し分ない。今作では「わきまえる」ことを知らない彼らと、それぞれに“もう1つの顔”を持つ「クムガプラザ」の住人たちが連帯する姿も共感を呼んだが、弁護士としての「正義」が根本から異なるチャヨンとミョンヒの関係性に注目するとさらに楽しめる。

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