『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の卓越した心理描写 “瞳”に表現される揺れ動き

『ヴァイオレット~』が描く心理描写

 11月5日放送の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)内にて、京都アニメーションが手がけた劇場アニメーション『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ー永遠と自動手記人形ー』(以下:『外伝』)が放送される。『金ロー』は映画枠にも関わらず、10月29日には2018年1月期の深夜に放送されたTVアニメを再構成した内容がオンエアされたのだが、Twitterの世界トレンド1位に輝くなど大きな話題となった。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、暁佳奈の同名ライトノベルが原作。2018年のTVアニメ放送後、2019年に今夜放送される『外伝』、2020年には完結編『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が公開され、興行収入21.3億円のヒットを記録。日本アカデミー賞優秀賞も受賞した。

 10月29日の放送がなぜ世界トレンド1位に輝くほど話題になったのか。それは「京都アニメーション制作」という一言だけで理解する人も多いはず。その理由は、安定した作画力にあると言える。街並みや風景、波打つ湖面、揺れる木々など、一瞬たりとも手を抜かず、細かいところまで丁寧に書き込まれている。実際、先週の放送中にはTwitter上で「湖や落ち葉の描写が美しすぎる」「映像美に心が洗われるよう」などのコメントが見られた。

 さらに、京アニの魅せるポイントとして、登場人物たちの繊細な心理描写も挙げられる。本作の主人公であるヴァイオレット・エヴァーガーデンは、かつて戦場に立ち「武器」と称された少女。道具として生きてきた彼女は“感情”を知らず育つのだが、自身に名前をくれたギルベルト少佐が最後に言った「愛してる」という言葉が理解できず、“自動手記人形”として働き、「C.H郵便社」の仲間たちや出会う人々と触れ合いながら、言葉の意味を探していく。

 自動手記人形とは、肉声の言葉を書き記してくれる「代筆」を行う機械人形、および人間の事。働き始めたばかりの頃は客の言葉の真意を理解できず、言ったままを書いてしまい、客が激高しながらヴァイオレットにクレームを言いに来たことも。しかし、人との触れ合いの中で、人の言葉には様々な心情が隠れているのを学び、自動手記人形は言葉の中から“本当に伝えたいこと”を掬い上げる仕事なのだと理解していく。

 作画力に繋がるのだが、京アニの心理描写は表情、特に“瞳”に表れている。ヴァイオレットの感情が動くたびに、揺れ、煌めく瞳。感情を知らず、無表情で描かれることが多いヴァイオレットだが、細やかな瞳の表現で視聴者も感情を読み取ることができる。

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