『ババンババンバンバンパイア』浪川大輔の森蘭丸が癖になる! 声で体現した原作の世界観

「私の名前は森蘭丸。約450年生きる吸血鬼である」
冒頭のモノローグだけで、森蘭丸演じる浪川大輔の声に「なんていい声なんだ」と心を掴まれてしまったのは私だけではないだろう。『ハイキュー!!』の及川徹や『ヘタリア』のイタリア、『ルパン三世』の石川五ェ門、『君に届け』の風早翔太など、数々の印象的なキャラクターを演じてきた浪川が、今回演じるのは吸血鬼だ。

しかし、蘭丸はただの吸血鬼ではない。ルックスよし、声よしな吸血鬼が登場したと思えば、その期待は“いい意味で”裏切られることになるのが本作の妙である。勘の鋭い人なら、開始1分ほどで、ひとり突然踊り出す様子のおかしい姿にそう思ったかもしれない。SNSでは「『HUNTER×HUNTER』のヒソカを思い出す」という声も多く見られるが、ミステリアスとも少し違う、何をしでかすかわからない蘭丸の雰囲気が、確かにそう感じさせるのも頷ける。
老舗銭湯で住み込みバイトをする450歳の吸血鬼・森蘭丸と、銭湯の息子・立野李仁の成長と純潔を描く本作は、「BL(ブラッディ・ラブコメ)」と銘打たれている。蘭丸は、自身の命を救ってくれた李仁への恩返しとして、彼の「18歳童貞の血」を味わうことを目的としているのだ。しかし、思春期を迎えた李仁がクラスメイトの女の子に一目惚れしてしまうと、蘭丸は李仁の童貞を守り抜くために決死の作戦を展開する。李仁のためを思っての行動が次々とすれ違っていく中、時折挟まれる“とぼける”演技にも、思わずクスッと笑みがこぼれてしまう。
『ババンババンバンバンパイア』(以下、『バババ』)は、第1話から際立つ蘭丸のセリフの多さが印象的だ。放送前に本作のアニメ化を聞いた時、原作の漫画が持つシュールなギャグは“止め絵”だからこそ映える部分もあるのではないかとも思わされる部分もあったが、実際のアニメーションでは作品独自のテンポが確立され、しっかり笑える作品として成り立っている。シンプルなラブコメとも違う、純粋なのかそうでないのかわからない、蘭丸の不可解なまっすぐさが絶妙に癖になる。こんなにもいい声で、「18歳童貞」が何度も連呼されるTVアニメもそうそうないだろう。




















