ばいきんまんは理想の上司だった!? 映画『アンパンマン』から学べる“失敗”との向き合い方
今年の春から漫画家のやなせたかしと妻・暢をモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』が放送されるにあたり、改めて注目されている「アンパンマン」。1988年に始まった『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)は、今なお世代を超えて愛され続けている国民的アニメだ。
一度も観たことがない人はおそらく稀。だけど、「最後にアニメのアンパンマンを観たのはいつですか?」と聞かれたら、明確に答えられない人が多いのではないだろうか。誰もが幼少期に夢中になり、成長とともに“卒業”していく。筆者も幼い頃は「てんどんまん自慢歌」を元気よく歌ったり、メロンパンナちゃんとロールパンナの切ない関係に涙したり、夢中になったことを覚えている。でも、いつしかアンパンマン離れし、子供もいないため、大人になってからアニメを観る機会がなかった。
そんな中、昨年6月に『それいけ!アンパンマン』劇場版シリーズ第35作『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』が公開され、歴代最高となる興行収入を記録したことを知った。「大人もアンパンマンの映画を観たい!」というリクエストに応え、シネ・リーブル池袋で始まった夜の時間帯・通常音量・場内暗転での上映“アンパンマンナイト”も好評を博して全国に拡大したという。昨年11月20日にDVDが発売となり、「大人でも楽しめるのだろうか?」という興味から久しぶりに観てみることにした。
本作はばいきんまんが大いに活躍するストーリーだ。筆者の中で、ばいきんまんはイタズラ好きで、みんなに迷惑をかけてはアンパンマンに倒され、「覚えてろよ〜」と捨て台詞を吐きながら去っていく、ちょっぴり情けないキャラクターのイメージで止まっている。だから、この映画を観る前、何人かの友人から「子どもが『それいけ!アンパンマン』の中で一番ばいきんまんが好きだ」という話を聞いたときは「なんでだろう?」と思っていたが、その理由がよく分かる作品になっていた。
物語は、ばいきんまんがある日絵本の世界に吸い込まれるところから始まる。そこで出会ったのは、森を守る妖精・ルルン。巨大な“すいとるゾウ”が森で大暴れし、困り果てていたルルンは、ばいきんまんに“愛と勇気の戦士”として助けを求めるのだ。
ばいきんまんはルルンに力を貸してやることにするが、それは決して善意からではない。絵本の世界にはアンパンマンがいないため、「すいとるゾウを倒せば、この世界を自分のものにできる」という野望に基づくもの。私利私欲で動くキャラクターが一切ブレていなくて、こういうところが大人も違和感なく物語を楽しめる理由なのだと思わされた。