『おかえりモネ』百音×菅波、なぜ釘付けに? 安達奈緒子脚本のスローな恋愛劇を紐解く

安達奈緒子の“スローな恋愛劇”にハマる理由

 こうした安達奈緒子脚本ならではのスローな恋愛の描き方は、いくえみ綾原作『G線上のあなたと私』(TBS系)でも印象的だった。

 婚約破棄をされた主人公・也映子(波瑠)と、主婦の幸恵(松下由樹)は、ショッピングモールで眞於(桜井ユキ)のバイオリン演奏を見て、バイオリンを弾きたい衝動に駆られる。兄の元婚約者である眞於に思いを寄せる大学生・理人(中川大志)も加わり、3人はバイオリンのレッスンを一緒に受けることに。

 そして、いつしか也映子と理人の間には恋心が芽生えていくが、眞於の病気を知った也映子は、理人を眞於のもとに行くよう背中を押す。そこで自分の気持ちに気づき、幸恵(松下由樹)に本音を吐露して涙が溢れてしまうが、その一方で理人も、かつて自分が思いを寄せていた女性・眞於のもとに行ったことによって、自分の中にある也映子への恋心を自覚する。

 それでもすぐに進展はしない。それどころか最終回まで2人の恋の行方はわからない。

 3人はミニコンサート「3コン」に集中する日々に突入。無事コンサートを終えた打ち上げで、幸恵が気を利かせて席を外すのに、2人は妙に意識してよそよそしくなり、しまいにテキーラを一気飲みした理人が告白しようとするも、酒の勢いでは良くないからと翌日に持ち越しすることに。

 ようやく付き合うことになると、今度は転職したばかりの社会人と大学生ですれ違いを心配する也映子に、理人は手をつないで「俺が学校行ってる間、あなたが暇を持て余してる方が俺は心配だし」と言ってのける。

 いよいよラブラブモードかと思いきや、今度はバイオリンだけでつながっていた3人の「ゆるくて優しい世界の居心地良さを壊したくない」「恋愛関係になると終わりが来る」とうだうだ悩み始める也映子。幸恵は「その先に行かきゃ」と促し、理人もまた、「今さらゆるい関係になんか戻れないでしょ」と言い、閉まりかけたエレベーターを強引に開き、それでもゆるい世界に閉じこもろうとする也映子を「めんどくせえ!」とバイオリンごと抱きしめるのだった。

 ちなみに、傷ついていた眞於が3人の演奏に救われるという展開も、也映子の居心地の良いゆるい世界を壊してその先に進む迷いを描いたことも、原作にないオリジナル展開である。「恋愛」の楽しさと苦しさから、心地良い温度の「人間愛」を描き、その上で一歩踏み出す勇気が持てない也映子を丸ごと受け止める理人に心をつかまれてしまった視聴者は多かったろう。原作の理人はもっとめんどくさい人物であり、安達奈緒子脚本+中川大志が、それを血の通った魅力的な人物に仕立て上げていた。

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