『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎、豪快さと揺るがぬ信念が魅力に 背景には暗い生い立ちも
9月25日、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』がフジテレビ系にて地上波で初放送された。さらに10月10日からは『「鬼滅の刃」無限列車編』、12月5日からは『「鬼滅の刃」遊郭編』が放送されることも発表。再び“鬼滅ブーム”が巻き起こりそうだ。
その「無限列車編」の主要キャラといえば、煉獄杏寿郎だ。煉獄は鬼殺隊剣士の最高位である「柱」の1人で、炎の呼吸を使う炎柱。初登場となったのは那田蜘蛛山での戦い後に開かれた柱合会議だ。鬼である禰豆子を連れていたことで、主人公・竈門炭治郎が柱合会議にかけられようとしている場面で「裁判の必要などないだろう! 鬼を庇うなど明らかな隊律違反! 我らのみで対処可能! 鬼もろとも斬首する!」と笑顔で登場。セリフの中身だけでなく、見た目のインパクトも相まってやや怖そうな印象を受けたものである。
だが、蓋を開ければ明るく豪快な頼れる兄貴肌の持ち主。「無限列車編」で、魘夢の術から目覚めた時の「うたた寝している間にこんな事態になっていようとは!! よもやよもやだ」、「柱として不甲斐なし!! 穴があったら入りたい!!」というおなじみのセリフからも彼の勢いと豪快さが伝わってくる。さらに、炭治郎から「ヒノカミ神楽」の話を聞いた時も、「俺の継ぐ子になるといい 面倒を見てやろう!」と言っており、強引さはあるものの面倒見の良さを見せていた。
そんな煉獄を表すかのように、攻撃もかなり派手だ。例えば、一気に間合いを詰めて敵を切り倒す「不知火」、円を描くように刀を下から振り上げて敵を斬りつける「昇り炎天」、炎が虎の形になって敵へ向かっていく「炎虎」……と上弦の参・猗窩座との戦いもかなりダイナミックなものであった。「パワータイプの猪突猛進型」と見えがちだが、冷静に状況を判断する力も高い。魘夢が汽車と融合して200人の乗客を人質にとった時も後方の五両を自分が、残り三両を我妻善逸と禰豆子が守り、魘夢の本体を炭治郎と嘴平伊之助が探し出すという策を瞬時に伝えていた。乗客全員を守るための的確な策であり、柱としての力量がはっきり見えた瞬間ではないだろうか。
常に豪快かつ前向きに戦いをしている煉獄だが、その生い立ちは意外にも暗い。煉獄の父も元・炎柱。情熱も実力もある父から指導を受けてきていたが、母が亡くなったことをきっかけに父は酒に溺れて指導を放棄。たった三巻しかない炎の呼吸の指南書を読み込み、独学で柱にまで登りつめている。しかし、柱になったことを父に報告しても喜んでもらえていない。それでも弟の千寿郎に「頑張ろう! 頑張って生きて行こう! 寂しくとも!」と前向きな言葉を掛けている。いつでも前向きだが心の中にある一抹の寂しさのようなものが見えることで、より煉獄杏寿郎というキャラクターが魅力的に見えているのではないだろうか。
そして、煉獄の一番の魅力はその心の強さだろう。千寿郎への言葉も然り、「無限列車編」でも自分の責務を強く意識して乗客全員を助けると言葉に出したり、命を落とす間際でも家族言葉を残し、炭治郎たちに自分の死を乗り越えて成長する後押しとなる言葉を送ったりと、優しい気遣いを見せていた。それもこれも、母の「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」という教えを果たすため。揺るがぬ信念を持ち続ける心こそ、煉獄という魅力あるキャラクターを作る核になっているのだろう。