『大豆田とわ子と三人の元夫』はラブコメ? ホラー? 描かれない存在が意味するもの

『まめ夫』はラブコメかホラーか

 火曜21時からカンテレ・フジテレビ系で放送されている坂元裕二脚本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(以下、『まめ夫』)は、住宅建設会社しろくまハウジングの社長・大豆田とわ子(松たか子)と三人の元夫たちとの関係を描いたラブコメディ。

 前回は、とわ子が親しくなった謎の男・小鳥遊大史(オダギリジョー)の正体が、しろくまハウジングを買収した外資系ファンド・マディソンパートナーズの法務部部長だと明らかになるという衝撃の展開で幕を閉じた。同時に小鳥遊は、ビジネスとプライベートは別だと言って、今までと変わらずとわ子と親しくしたいと言う。

 小鳥遊との会話にやすらぎを感じたとわ子は、戸惑いながらも小鳥遊の申し出を受け入れ、会社では経営の不備を指摘されて社長職の辞任を要求される一方、休日は二人で合うという日々を続けていた。

 ある日、小鳥遊は自社の社長の「お嬢様」とお見合いするように命令され、とわ子にお見合いの相談を持ちかける。

 とわ子のアドバイスがうまくいき、お嬢様にプロポーズされた小鳥遊。しかし彼は返事ができずにいた。17歳から31歳まで親の介護に明け暮れていた小鳥遊は、社長に拾ってもらったことに恩義を感じ、自分を消して社長に尽くしてきたが、そんな生き方に対して迷いを感じていた。

 小鳥遊を解放したいと思ったとわ子は彼を家に招き入れ、いっしょにカレーを食べる。そこに3人目の元夫で弁護士の中村慎森(岡田将生)と2人目の元夫でファッションカメラマンの佐藤鹿太郎(角田晃広)が訪れる。小鳥遊の姿を隠してごまかそうとするとわ子だったが、最初の元夫・田中八作(松田龍平)まで現れ、大騒ぎとなる。

 娘の唄(豊嶋花)がとわ子とテレビを見ながら「出てこないじゃん。これホラーじゃないの?」と言う場面が象徴的だが、第5話あたりからラブコメの裏側に不穏な影がちらつき、突然ホラー映画のようにとわ子と関わる男が、不気味な本性を現すという展開が『まめ夫』では続いていた。

 小鳥遊が会社に現れる場面はその極地であり、オダギリジョーが穏やかなトーンで喋れば喋るほど、小鳥遊の不気味さが増していったのだが、今回の第8話は小鳥遊の性格を「ツンデレ男」の一言で片付けてしまい、ホラー路線に突き進んでいた物語を元のラブコメテイストに強引に引き戻してしまった。その豪腕ぶりに何より驚かされた。

 常識的に考えると、あれだけ仕事で敵対している相手と、ご飯を食べたり楽しく雑談できるのか? と思ってしまう。それこそ、いつ自分を殺すかわからないゾンビや吸血鬼といっしょに暮らすようなものだが、ひょっとしたら『まめ夫』がやりたいのは、そういう物語なのかもしれない。

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