ジャニーズJr.×文豪作品、誕生の背景は? 井上衛Pが明かす、エンタメ界をつなぐ想い
『WOWOWオリジナルドラマ 文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』が3月21日より放送・配信スタートする。そのタイトル通り、ジャニーズJr.の人気ユニットである少年忍者のメンバーが主演となり、夏目漱石や芥川龍之介、太宰治など、日本を代表する文豪たちの傑作小説とのコラボを果たす。
「あなたが読むべき本は、もう決まっているのです」。不思議なブックカフェのマスター(イッセー尾形)に誘われ、それぞれ悩みを抱える少年たちがページをめくると、そこには人生を少しだけ変えるかもしれない新しい世界が……。
“文豪作品は難しそう”と気構えている方も、きっとジャニーズJr.たちと一緒なら、楽しく旅ができるはず。もちろん、かつて読んだきりで、久しぶりに名作に触れたいという方にもおすすめの短編集に仕上がっている。
このドラマの企画したのは、これまで東野圭吾や吉田修一といった、そうそうたるベストセラー作家たちの小説をドラマ化してきた井上衛プロデューサー。今、ジャニーズJr.×文豪作品を手がけようと思った背景、そして現場で感じた彼らの成長、そして過去から未来へとエンタメ界をつなぐ想いについて、たっぷりと語ってもらった。
タイトルだけ知ってるような文豪作品を、ジャニーズJr.が未来につなぐ
――『文豪少年!』の制作背景を聞かせてください。
井上衛(以下、井上):これまでHiHi Jetsの高橋優斗さんや、美 少年の那須雄登さんなど、ジャニーズJr.のみなさんとは、いくつか現代作家さんの作品で、ドラマのお仕事をさせていただいてまして、その中で、「ジャニーズJr.の皆さんを主演にしたシリーズものを作ろう」という話が出たんです。しかし、現実問題として10本の新作小説を現代作家さんに書いてもらうのも時間的に厳しく、どうしたものかと悩んでいたところ、家の本棚に飾りのように並んだ文豪作品が目に入って。ちょっと読み返してみると、これがすごく面白くて。昔は、教科書で読まされていたからかそんなに面白く感じられなかった記憶でしたが、やっぱり時代を超えて読まれるだけの魅力があるんだなと。これを若い人たちとドラマにしたら、もっといろんな世代の人に面白さが伝わるんじゃないか。大げさにいえば、日本の将来のエンタメにとってもすごく意義のある仕事になるんじゃないかと思ったんです。ちょうど、コロナ禍で過去の文化遺産を未来につないでいく重要性を感じていたところなので「文豪×少年たちでいこう」と企画しました。
――第1話は黒田光輝さんが芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を、第2話はヴァサイェガ渉さんが太宰治の「走れメロス」を……と各作品を担当していますが、キャスティングはどのようにお決めになったのでしょうか?
井上:レッスンの様子を見学させて頂いたり、彼らが毎週更新しているYouTubeの『ジャニーズJr.チャンネル』の動画をひたすら見ました。「あ、黒田くんってこういう人なんだ」「ヴァサイェガくんは横顔がカッコいいな」とか、研究して、キャスティングをしました。今回、ドラマを作るにあたり、一つ大きな課題があって、作品の多くが、そのまま映像化するには、時代的にも、そして演じる彼らの年齢的にも、そぐわない表現がかなりありました。そこは現代版として発信していく必要があったので、彼らの個性を踏まえて、あて書きもしています。
――「文豪作品をそのまま映像化できない表現がある」とおっしゃっていましたが、小説原作のドラマを数多く手がけられている中で、そうした表現の規制は年々厳しくなっていると感じていますか?
井上:そうですね。ちょっと窮屈な時代になってきちゃったなという感覚はあります。ネット等で「いかがなものか」と批判が出ることを恐れて、「あれもダメ」「これもダメ」と自主規制していく動きもあって、少し残念だなと。殺人事件を描いたとしても、決してそれを推奨しているわけではないですからね。ドラマって、本当はもっとファンタジーの世界であるべきだし、エンタメだから見られる世界があると思うんです。ドラマであれ、舞台であれ、映画であれ、普通の人間が経験できないものを、見せてくれるのがエンタメなので。個人的には、もっと自由であってほしいという思いもありますが、その縛りがあるからこそ、今回のように新しい解釈をしていこうという工夫にもつながる。そのあたりで作り手としての手腕が問われるな、という気持ちでいます。