成田凌は朝ドラにうってつけの俳優だった 『おちょやん』で発揮する“相手役”の資質

成田凌は朝ドラにうってつけの俳優だった

 それはもちろん、『弥生、三月 -君を愛した30年-』のように1人の人物を長い年月にわたって演じる作品では非常に顕著に発揮さるだけに、「朝ドラ」への適性の高さは言うまでもなく高いはずだ。ましてや、今年の夏クールに病気療養で降板した清原翔の代役を務めた『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)のように、積極的な主人公の姿に感化されて取っ付きづらい雰囲気から徐々に柔らかく前向きに、人間味を帯びていく変化を演じられるというのも“相手役”として重要な資質である。主人公を立てながら、自分の役柄を魅力的に見せることは、器用な役者にのみできる技だ。

 さて、第4週から『おちょやん』に本格的に登場した成田演じる一平。天海一座の中で、いまひとつ芝居に身が入っていないようなその姿は、成田自身のコメントにもあったように「まだ若くて定まっていない状態」という朧げさを明確に体現している(参照:成田凌「ただただ“杉咲花がすばらしい!”」 『おちょやん』現場の雰囲気の良さを語る)。それでも千代を気にかけていることは見て取れるだけに、これまで成田が演じてきた様々な役柄同様、劇中での心理的な変化、ないしは進化が期待できよう。まだ『おちょやん』の物語は始まったばかり。これからさらなる見せ場とともに、成田凌という演技者の開眼を楽しめるに違いない。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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