杉咲花が『おちょやん』で学ぶ喜劇の醍醐味 「挑戦し続けることは楽しい」

杉咲花が『おちょやん』で学ぶ喜劇の醍醐味

 NHK連続テレビ小説『おちょやん』が11月30日よりスタートした。女優の道を生き抜き“大阪のお母さん”と呼ばれるまでになったひとりの女性の物語である本作。第1週目から少女時代の千代を演じる毎田暖乃のパワフルかつキュートな演技に多くの視聴者が魅了されている。舞台は道頓堀に移り、千代が喜劇の世界と出会う様が第2週では描かれたが、第3週目より本作の主演を務める杉咲花が本格登場。どんな逆境にも立ち向かっていく千代を杉咲はどう演じたのか。本作の放送前に話を聞いた(11月某日取材)。

『おちょやん』自体がモチベーションに

ーー“朝ドラ”は『とと姉ちゃん』に出演されていますが、本作で主演を務めることが決定したときの気持ちは?

杉咲花(以下、杉咲):本当にうれしかったです。“朝ドラ”のオーディションは『とと姉ちゃん』の前後にも受けていて、いつかヒロインを演じたいという思いがずっとありました。これだけ長い期間、ひとつの役を演じられる機会は“朝ドラ”以外でなかなかないと思うので、これからもお芝居を続けていきたいと思っている自分にとって、すごくいい経験になるだろうと思っていました。

ーー2020年は新型コロナウイルスの感染拡大という誰もが予期せぬ1年となりました。本作もクランクイン直後に自粛期間に入ってしまったそうで。

杉咲:数日だけ撮影してすぐに自粛期間となりました。台本を読み込む時間、関西弁を練習する時間がしっかり取れたことは、今振り返ると大きかったと思います。撮影済みの映像データを監督が送ってくださって、(毎田)暖乃ちゃんのお芝居からも元気をもらっていました。千代と向き合ういい時間だったと思います。自粛期間があったこともあり、視聴者の皆さんに作品を届けることができることが、いつも以上に特別なものだと感じています。

ーーここまでの撮影を終えて、『とと姉ちゃん』のときとの違いはどんなところにありますか?

杉咲:『とと姉ちゃん』に出演させていただいた際、キャスト、スタッフの皆さん全員が15分という短い時間の中に熱を注ぎ込んでいる姿に感動しました。もちろん、朝ドラに限らずどの作品にもあるものなのですが、朝ドラは視聴者の方々の“生活”の一部にもなっている。そんな作品に携わらせていただけることは本当にうれしかったです。『とと姉ちゃん』出演の際は、私の出演シーンは決して多いわけではなかったのですが、それでも毎日の撮影とリハーサルの量に圧倒されました。今回、実際にヒロインを演じさせていただいてみると、大変であることは間違いないのですが、スタッフの皆さん全員と毎日顔を合わせることができて、キャストの皆さんの最初から最後までを見送ることができて、作品のすべてに携わらせていただけていると実感します。それは本当に幸せでうれしいことだと感じています。

ーー長期にわたる撮影ということもあり、モチベーションの維持も大変かと思います。

杉咲:休みもなかなかなかったり、覚える台詞の量が膨大だったり、大変なことはあります。でも、そんなときに台本を改めてじっくり読んだり、共演者の皆さんの顔を見たり、完成した映像を観ると、「まだまだ頑張れる!」とやる気が湧いてきます。『おちょやん』という作品自体が自分にとってのモチベーションになっていると思います。

ーー杉咲さんが感じる『おちょやん』の魅力はどんなところにあるのでしょうか?

杉咲:千代には険しい試練がどんどん降りかかってきますが、負けずに前を向いて進んでいく人なので、自分自身も台本を読んだり演じたりする中でパワーをもらっています。また、千代を取り巻く登場人物たちも、いろんな悩みや問題を抱えて生きています。でも、そこからあと一歩だけ踏み出してみよう、もう少しだけ頑張ってみようという人ばかりで。自分ひとりじゃまっすぐ立つことができなくても誰かに支えてもらったり、誰かの支えになったり。思いやりがある人がたくさん登場します。「喜劇と悲劇は紙一重」という台詞が劇中にもあるのですが、その言葉どおりの魅力が本作にも詰まっていると思います。すごく楽しいシーンでも泣けてきたり、ものすごく悲しいシーンでも愛おしさを感じたり。日々大変な思いを抱えている方々の少しでも癒やしに、背中を支える作品に、本作がなってくれたらうれしいです。

ーー「喜劇と悲劇は紙一重」という言葉がありましたが、本作で喜劇に触れてみていかがですか?

杉咲:出演が決まってからスタッフさんと何回か大阪の喜劇を観に行かせていただいたんです。役者の方々が登場した瞬間からの「全てのお客様に楽しんで帰っていただくんだ」という姿勢に、感動で鳥肌が止まりませんでした。本作の撮影を通して、私も「笑ってもらう」立場になっていますが、本当に難しいことですし、怖いなと感じています。撮影現場でも、星田(英利)さんをはじめ、芸人の仕事をされてきた皆さんは撮影をしていないときでも、ボケとツッコミが常にあって本当にすごいです。撮影中、監督によってはアドリブを引き出すために、カットを全然かけてくれない方もいらっしゃって。自分なりに頑張ってアドリブを入れてみるんですが、びっくりするぐらいに現場がシーンとなってしまうときもありました(笑)。でも、そうなってもすぐに次を頑張ろうと思えているので、メンタルは強くなっていると思います。

ーー喜劇は自分に向いていると感じますか?

杉咲:向いているとはまったく思っていません。怖いです。足や手も気がついたら震えているときがあります。でも、スタッフ、キャストの皆さんと試行錯誤しながら挑戦し続けることは楽しいです。

ーー幼少期の千代の“言葉の強さ”も印象に残りました。成長した千代も?

杉咲:ときどきではありますが、強い言葉が出るときはあります。お気に入りの台詞としては、千代が自分に向かって、「やい、われえ、竹井千代、ええかげんにしさらせ!」というシーンです。その迫力とドスが効いた感じは演じていても新鮮で楽しかったです(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる