田中圭は人間に戻れるか? 『先生を消す方程式。』ゾンビ展開を狙う鈴木おさむの方程式
先生を消そうとしたら、先生がゾンビになって襲ってきた。『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)第6話は義経(田中圭)復活の場面ではじまる。義経を死なせたことで自責の念にさいなまれた命(秋谷郁甫)は、義経が埋められた土に赤ワインを捧げ、まじないの言葉を唱える。命のネクロマンシー秘術によって義経は生き返ったが、その姿は以前とは異なっていた。
作中で登場人物が死んだり、前と違う姿で再登場することはあるが、ジャンルごと変わってしまう例は多くない。復活した義経は、基本動作は緩慢で記憶は断片的、打たれ強い(死んでいるので)などゾンビとしての特徴を備えている。ゾンビになった義経を止めるには、頭を潰さなくてはならないのだろうか。想像するだけでファンの悲鳴が聞こえてきそうだ。
学園ドラマからゾンビホラーへ。斬新すぎる展開は脚本・鈴木おさむの真骨頂だ。『奪い愛、冬』や『M 愛すべき人がいて』(いずれもテレビ朝日系)で注目を集めた鈴木の本職は放送作家。視聴者のツボを突く手腕はドラマや映画でも発揮されている。
脚本家としての鈴木の特徴は、ストーリー展開の速さだ。ウェブ配信された『奪い愛、夏』(AbemaTV)最終回では、副音声で出演者と舞台裏トークを繰り広げており、鈴木の考えを知ることができる。鈴木によると「物語が起きないところは削って、展開のシーンだけ残していく」とのことで、冗長さを排した脚本がスリリングな展開に一役買っていることは間違いない。
また、鈴木作の舞台劇にドラマや映画にもなった『八王子ゾンビーズ』がある。同作は山下健二郎演じる元ダンサーの僧侶・羽吹とイケメンゾンビ集団の交流を描くもので、従来のイメージとは違うゾンビの描き方が新鮮だった。『せんけす』の急展開や主人公のゾンビ化は過去作に伏線が仕込まれており、鈴木の作風の進化ととらえることもできる。
こういった作家性を俳優が理解していることも大きい。1年に1作、土曜ナイトドラマで主演を務めてきた田中は、「何かが起こるのではないかと思わせてくれる人」と鈴木への信頼を明かしており(参考:田中圭が語る、『先生を消す方程式。』脚本家・鈴木おさむへの信頼 「僕にとって本当に貴重な人」)、今作のポイントを「ドS」な鈴木に「キャストがどうやって打ち勝つか」であると話している。