酒井若菜の俳優としての軌跡 『IWGP』の黒ギャルから『おむすび』での“良き母”へ

酒井若菜の俳優としての軌跡

 結(橋本環奈)が翔也(佐野勇斗)にプロポーズしたところで締め括られたNHK連続テレビ小説『おむすび』前半戦。すでに視聴者からは祝福の声が上がっていたが、新年1月6日から始まった第14週では、2人が両家からまさかの結婚の反対に遭う。

 そんな今週、再登場となるのが、翔也の母・幸子(酒井若菜)だ。幸子が登場するのは10月17日に放送された第14話以来、約3カ月ぶりとなる。同話では、栃木から糸島にやってきた幸子が迷っていたところを結が発見。翔也が暮らす高校の寮まで案内し、お礼に苺をもらうという展開で、実際に栃木出身である酒井のナチュラルな方言が話題となった。また、「酒井若菜が高校生の息子を持つ母親を演じている」ということ自体に驚きを禁じ得ない視聴者も多かったようだ。

 本作では、「食」と並んで「ギャル」が物語の根幹を担う大事な要素となっているが、酒井もかつてはある意味、伝説のギャルだった。2000年に放送され、若者に絶大な支持を受けたドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系/以下、『IWGP』)。当時はグラビアアイドルで、俳優としてはまだ新人だった酒井は、同作で主人公のマコト(長瀬智也)といい仲になるギャルのリカを演じた。第1話で何者かに殺害されてしまうも、物語の象徴とも言える重要な役で、今でも酒井の代表作の1つに数えられる。この頃は黒ギャルが定番で、酒井もメイクで肌を黒くしていたのが印象的だ。

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 また、『IWGP』と同じく宮藤官九郎が脚本を手がけた2002年放送のドラマ『木更津キャッツアイ』(TBS系)でも酒井は元高校野球部の仲間で結成された“木更津キャッツアイ”のメンバーのひとり、バンビ(櫻井翔)と付き合うことになるギャルのモー子を好演。モー子はまさに「他人の目は気にせず、自分の好きなことを貫く」ギャルで、喜怒哀楽を素直に表現する姿が愛らしく、同性からも憧れられる存在だった。しかし、実際の酒井はモー子とは真逆の性格で、声も今より低かったそう。そのため、喉を閉じ、台詞に節をつけることで独特なキャラクターを作っていたことを、のちに酒井は自身のYouTubeチャンネルで語っている。

木更津キャッツアイ。/ずっと好きでいてくれてありがとう!

 近年は地に足の着いた役柄が増え、バイプレイヤーとして活躍している酒井。テレビ東京の人気グルメドラマ『絶メシロード』シリーズでは、絶滅してしまいそうな絶品メシ=絶メシをめぐる車中泊旅が趣味の主人公・民生(濱津隆之)の妻・佳苗役でお馴染みだ。民生はしがないサラリーマンで妻と娘から若干雑に扱われているが、決して家族仲が悪いわけではない。何気ない夫婦のやりとりの中で一見冷たい言動があったとしても、酒井の演技でその根底に愛が感じられるから、民生が孤独に見えず、メインとなる旅も安心して見守ることができる。

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