『せんけす』の鈴木おさむ、『共演NG』の秋元康 “放送作家としての構成”が話題の要因?
10月に始まった新作ドラマの多くは中盤に差し掛かったが、賛否を呼んでいるドラマが二作ある。
一つはテレビ朝日系の土曜ナイトドラマ(土曜23時放送)で放送されている異色の学園ドラマ『先生を消す方程式。』(以下、『せんけす』)。
名門私立高校・帝千学園の3年D組は、親がセレブで成績優秀な生徒たちが集められたエリートクラス。しかし、生徒たちは問題児ばかりで担任教師は次々と辞職に追い込まれていた。新担任の義経こと義澤経男(田中圭)も、生徒によって命の危機に追い込まれるのだが、義経は教室に生還し、自分を消そうとした生徒に語りかけ、逆に追い詰めていく。
脚本は鈴木おさむ。バラエティ番組を多数手掛ける一方でテレビドラマも精力的に執筆しており、『奪い愛、冬』や『M 愛すべき人がいて』といったテレ朝の深夜ドラマでヒット作を連発している。強引な展開の中で俳優たちが過剰な芝居を披露することが作品の持ち味で、作り物っぽさが強調された作品に、視聴者がツッコミを入れながら楽しむという構造になっている。これはかつての大映ドラマを彷彿とさせる作劇手法で『せんけす』も同じ手法で作られていると言えるだろう。
もう一作は、秋元康が企画・原作を担当する『共演NG』。テレビ東京の月曜22時から放送されている本作は、元恋人同士、大物俳優と元付き人、キャラかぶりのイケメン俳優、同じグループにいたアイドルといった、様々な事情で共演NGとなっている俳優たちが一同に介するドラマ『殺したいほど愛してる』の撮影現場の内幕を描いた本作は、80年代にフジテレビが量産していた業界ドラマのようだ。
コロナ禍におけるドラマ制作の内幕や、深夜ドラマは高く評価されているが地上派のプライムタイムでは苦戦しているテレ東のお家事情が本編のドラマとリンクしている多重構造に作りとなっている。
テレビ番組や芸能界の裏側を見せることで虚実の境界を混濁させ、視聴者を没入させていく手法は、古くはバラエティ番組『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)から生まれたアイドルグループ・おニャン子クラブ、近年ではアイドルグループ・AKB48の選抜総選挙で展開した秋元がもっとも得意とする手法である。