エンタメと政治の距離が急速に近づく? 社会派ドラマとドキュメンタリー映画の盛り上がり

エンタメと社会・政治、急速に近づく?

 ドラマや映画、エンタメの世界でいま、大きな変化が起こっている。

 一つは、「新型コロナウイルス」が存在する世界を描くか、あるいは、コロナが存在しない、現実世界からかけ離れた世界を描くのか。リアリティか、何も考えずに楽しむことのできる完全なエンタメかという点において、大きく二分する流れが起きている。

 もう一つは、リアルな設定、荒唐無稽な設定いずれにおいても、「社会」や「政治」を想起させる・反映させる作品が増えていること。

 例えば、新型コロナウイルスの影響で放送開始時期が遅れた篠原涼子主演の『ハケンの品格』続編(日本テレビ系)は、大前春子という強烈なキャラクターを軸としたキャラクタードラマに見えて、痛快な印象の前作とは異なる後味の悪さ、苦みを感じさせる内容となっていた。「働き方改革」が叫ばれ、「アウトソーシング」が進み、「AI」が導入され、おまけに現実ではリモートワークが急速に普及した。

 「労働弱者」を描くという根本的な部分は前作と共通している。しかし、前作が放送された13年前とは異なり、コロナ禍で疲弊しきった世の中では、「桜を見る会、まだそんなことやってるバカがいるんですかね」「このままだと、私たちも、あなたたちも、溺れ死にます。日本の会社は、日本の社会派沈没です。日本沈没」などのストレートな政治批判、社会批判には、「笑うに笑えない」といった声も少なくなかった。

 また、野木亜紀子脚本・綾野剛×星野源W主演の社会派ドラマ『MIU404』(TBS系)では、違法ドラッグ、外国人の労働問題など、リアルに社会で問題になっていることを描き、話題となった。同作は、ドラマ好きを中心に圧倒的高評価を得た一方で、一部からは「ちゃんとエンタメやってくれ!」「社会派ドラマ、鼻につく」などの批判や、拒絶反応があった。

 その一方で、『半沢直樹』続編では、半沢(堺雅人)が箕部幹事長(柄本明)の悪事を暴いた際に「記憶にないですむのは国会答弁だけの話です。ここは国会ではありません。そんな馬鹿げた言い訳、一般社会では通用しない!」「政治家の仕事とは、人々がより豊かに、より幸せになる政策を考えることのはずです」などと、どストレートかつ痛烈な政治・社会批判のメッセージを放った。

 にもかかわらず、『半沢直樹』の場合、いわゆる「顔芸」を含めた役者同士のライブ感溢れる熱演ぶりが「娯楽作品」の印象を強く与えたこともあってか、社会派ドラマとして受け止める人は少なかった。

 そうした状況について、芥川賞作家の平野啓一郎氏がTwitterで「半沢直樹に快哉を叫んで、戦後最悪の腐敗政権を『継承する』と宣う現実の政治を歓迎してるんじゃ、世話ないわ……」とつぶやき、話題になったことも記憶に新しい。

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