三浦春馬さんの眩しい笑顔の思い出を玲子のように愛でていく 愛情に溢れた『カネ恋』を振り返る

『カネ恋』が描いた「繕う」というプロセス

 火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)が最終話を迎えた。物語は、なぜ玲子(松岡茉優)が清貧女子となったのか。そして、前回思わぬ形でキスを交わした慶太(三浦春馬)への想いを確信するところまでが描かれた。

猿彦(≒慶太)が見守る、玲子のルーツを追う旅

 ゴロゴロピッカーンの雷鳴に驚いた勢いでチュッとかわいらしいキスをし、眠れぬ夜を過ごした2人。翌朝、玲子は慶太が何も告げずにどこかへ出かけてしまったことを知る。さらに、そのまま会社を無断欠勤。いつも仕事の邪魔ばかりしたが、職場を明るくしてくれた慶太を寂しがる職場の仲間たち。思い出されるのは、人懐っこい笑顔ばかり。帰宅しても姿を現さない慶太。玲子の傘を返しに来た早乙女(三浦翔平)も、思わず慶太の姿を探してしまう。フラッといなくなってしまったことを聞くと「本当、自由なヤツだな」とポツリとつぶやくのだった。

 そんな中、玲子は父からと思われる仕送りの形跡を見つけてしまう。10年もの間、送られ続けてきた現金書留。その父は、玲子の望むものを全て与えたいと会社のお金を横領して、逮捕された過去が明かされる。父に会いたいけど、会うのが怖い。自分が父の人生を壊してしまったのだから……そんな複雑な気持ちでいる玲子の背中を押したのは、慶太のペットロボット・猿彦だった。アロハシャツを着て、少し落ち着きがなく、目の表情が豊かな猿彦は、見れば見るほど慶太そっくりだ。猿彦にどこか慶太を感じながら、玲子は父との再会の旅に出る。

「繕うほどに増す愛着」を知らない私たち

 このドラマの大きなテーマは、「お金」と「愛」だった。親が子を思って送るお金、憧れの人に喜んでもらいたいと尽くすお金、承認欲求を満たすために振る舞うお金、自分が自分を労るために使うお金……私たちがお金を使うときには、自分が大事にしている何かを得るためだ。もちろん、その金額が愛の大きさと比例するとは限らない。お金があるから愛情があるとも言えないのと同様に、お金が払えないからといって愛情がないとも言いきれない。そこの相互関係はハッキリとはわからないけれど、少なくともお金を払って手に入れたいものがある日々は、結構幸せだったり、結構楽しかったりする。

 欲するということは、そこに「愛」があるということ。お金はたくさんないけれど、自分が欲したものをじっくりと吟味しながら手に入れる生活を、玲子は「幸せ」「楽しい」と父に伝えた。そして、その始まりは父がくれたサルのおもちゃを繕うことからだった、とも。ずっと手放したくないと思えるものを持っている。その確信が、玲子を強くしたのだ。それはモノにあふれていたときも、サルのおもちゃしか手元にないときも、与えられていたのは父の愛という意味では変わらないと思えたから。

 その後も、モノが多くあることよりも、その一つひとつにしっかりと愛を感じることを大切にしてきた玲子。愛用の品たちが壊れるたびに直して使い続け、慶太に「繕うほどに愛着が増す」と話していたのが印象的だった。使い捨てる便利さに慣れてしまった私たちは、その愛着をどれほど知っているのだろうか。もしかしたら、私たちが抱えるどこか満たされない日々に必要なのは「繕う」というプロセスなのかもしれない。父の生きがいとも言える玲子に続けてきた仕送りもまた、親子関係のほころびを繕うひとつの手段だったのだろう。大きな過ちを犯し、幸せな日々を壊してしまった。それでも人生を繕い続けていけば、いつか大切な人と遠い日の思い出で笑える日がくるかもしれない。いや、そうであってほしいという制作サイドの願いが垣間見えるような展開だった。

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