松本まりか&松本穂香の対照的な姿 『竜の道 二つの顔の復讐者』に見える皮肉な因果関係
『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)第4話は、竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)の双子内だけで共有していたはずの復讐計画に、周囲の人間が勘付き、巻き込まれていく“因果”を感じずにはいられない怒涛の展開。そんな中、皆が悲しい嘘を重ねながらも、それぞれが自分の“守るべきもの”を心に決めた決定回でもあった。
まずは、霧島源平(遠藤憲一)の長女まゆみ(松本まりか)と、竜二の血の繋がらない妹・美佐(松本穂香)の愛憎劇。「我が娘ながら、まともな女じゃありませんから。あなたみたいな真っ当な人間がどうして“これ”と付き合うのか、正直理解に苦しんどるんですわ」と実の父親にも言わしめるまゆみと竜二との交際だが、美佐からの「わかりません。なぜ兄があなたのような人と付き合ってるのか」という言葉と重なる。
まゆみの指図で取り巻きの男から執拗な嫌がらせを受けているにも関わらず、誰にも相談せずに自力で男たちの正体を突き止めに行く真っ直ぐで、どこをとっても正しく強い美佐。首謀者であるまゆみと2人で話したいと大胆な提案を持ちかける。これまでまゆみの周りには、彼女のバックに目が眩んで近寄ってきたり、言いなりになる者しかいなかったのに、美佐のそんなことお構いなしの様子に調子を狂わされる。初めて自分を1人の人間として対峙してくる美佐に対して、内心自分では敵わないとまゆみの顔に珍しく余裕のなさが滲む。まゆみが言い放った「あんたと私では住む世界が違う」という言葉の意味するところは、決して社長令嬢と一介の小学校教員、洗練された都会の女と田舎から出てきたばかりの垢抜けない女、という意味だけではなかった。
まゆみからの呼び出しに応じ、出かけた先でさらに危険な目に遭う。しかし、まゆみも美佐のこの逃げも隠れもしない正々堂々とした態度に、ついに本音がこぼれ出る。「誰からも愛されて真っ直ぐ育ちましたって顔して、私の周りをうろつかれるとイラつくのよ」。彼女から出た初めての悲痛な心の叫び、彼女がどんなに望んでも手に入らないもの。それに対して美佐は、同情するでも怯むでもなく「誰からも愛されないから真っ直ぐ育たなかったって言ってるの?」と返す。
この時点で美佐は、自分の両親を自殺に追いやったのがキリシマ急便の社長で、目の前にいるまゆみがその娘だと知っているのだ。自分を愛してくれた両親を奪った張本人の娘が、誰にも愛されなかったと苦しむ姿に何を想っただろう。自分のせいで酷い目に遭ったのに迷うことなく自身の手を引いて誘ってくれた美佐に、それでもなおこちらに怪我がないか気遣ってくれる正真正銘の優しさに触れて、まゆみも完敗を悟ったようだった。