『わたどう』横浜流星、『MIU404』星野源ら、人気俳優たちが今期ドラマで見せる“シリアス演技”

今期ドラマは俳優陣の“シリアス演技”に注目

 新型コロナウイルスが猛威を振るっている2020年、国内のテレビドラマ業界も大きな打撃を受けた。放送時期の延期、あるいは撮影が間に合わずに途中で休止……。例年であれば「7月クール」といったような区分けができたが、今年はイレギュラーな分類になりそうだ。

 ただ、そんな中でも『半沢直樹』(TBS系)が視聴率20%台をキープするなど、ドラマ人気は相変わらず高い。Netflixなどの動画配信サービスも会員増が進んでおり、不要不急の外出を避けてステイホームに徹する人々が増えたことも要因といえるが、やはり純粋に「観たい」と思えるラインナップが多いのだろう。

 現在放送中の新ドラマのラインナップからも、人気俳優をそろえたり著名な脚本家を迎えたり、待望の続編をスタートさせたりと、様々なアプローチで視聴者を楽しませようとしていることが伝わってくる。

 今回は、そんな新ドラマの中から、人気俳優たちが見せる「シリアス演技」に注目。これまでとは一味違うダークな表情に注目し、ご紹介する。

『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)

『私たちはどうかしている』の横浜流星 (c)日本テレビ

 8月12日から放送開始した本ドラマは、浜辺美波と横浜流星の人気俳優が“対決”。どちらも圧倒的な美貌と人気を誇る次世代スターだが、役どころが興味深い。2人が扮するのは、老舗和菓子屋で起こった殺人事件の「容疑者の娘」と「被害者の息子」。2人が15年後に顔を合わせたことから、運命の歯車が再び回り始めていく。

 幼なじみだった七桜(浜辺美波)と椿(横浜流星)だったが、15年前の殺人事件が起こった際、椿の証言が決め手となり七桜の母は逮捕される。彼女はそのまま他界してしまい、七桜はずっと椿を恨んでいた。“和菓子対決”の場で再会した2人だが、椿は七桜を覚えておらず、あろうことか「俺と結婚しない?」といきなりプロポーズ。七桜は復讐を果たすためにこの“契約”に乗るのだが……。

 気鋭の和菓子職人に成長した七桜と、形骸化した老舗和菓子屋を立て直したい跡取り息子の椿。両者の思惑がどう“ラブ”に変換していくのかが大きな見どころだが、これはつまり2人の関係性の“氷解”を、役者が丹念に見せていく必要があるということ。特に、横浜に課せられた役割は極めて重要だ。

 横浜は、至高の和菓子作りに没頭するあまり周囲に攻撃的に接する唯我独尊なキャラクターに扮しているが、ともすればステレオタイプの“俺様キャラ”に陥りかねない。しかし、雨中での土下座シーンなど、ここぞという場面で充血するほどに目に力を込め、ギラギラとした生身の芝居でつなぎとめている。

 さらに、創業400年の老舗和菓子屋の看板を背負うにふさわしい所作も身につけなければならない。隙がなく、それでいて洗練された立ち振る舞いに着物の着こなし、発声に至るまで細かく調整して役になりきっており、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)や『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)などからより進化した、潜在力の高さを見せつけている。

 先述した通り、役の関係性の変化がキーポイントになる本作。今後、横浜と浜辺がどのようにキャラクターを進化させていくか、楽しみに見届けていきたい。

『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)

『竜の道 二つの顔の復讐者』の高橋一生 (c)カンテレ

 “目の演技”では、『竜の道 二つの顔の復讐者』の高橋一生にも注目だ。玉木宏と共に「両親を死に追いやった男に復讐を誓う双子」を演じており、重圧感ある目の演技で魅せる。

 復讐劇を演じる上での醍醐味は「激情を“隠す”」演技にあるといえるだろう。本性を隠し、憎き相手に近づく。宿願を達成せんと、心を殺して振る舞う。その悲壮な覚悟に、観る者は心打たれるのだ。つまり、演技の工程としては、「激情」を「繕い」でコーティングせねばならない。いわば、キャラクターと、そのキャラクターがかぶる偽りの仮面、2つの“役”を演じるわけだ。

 高橋は10月16日に劇場公開もされる『スパイの妻』でも、妻を翻弄するミステリアスな貿易会社の社長に扮しているが、静の演技ににじむ一瞬の動(激情)を構築する術に長けている。『竜の道 二つの顔の復讐者』でもその才能がいかんなく発揮され、笑いながらも目で脅すシーンや、柔和に振る舞いつつ、焦りが微かに表情に出るシーンなど、高橋の微細な表情筋がそのまま、作品の緊迫度を物語っているのだ。

 その高橋と阿吽の呼吸で魅せるのが、玉木のポジション。彼が演じる兄もまた周囲に気取られぬように標的に近づいていくが、こちらは「復讐のために整形し、別人に成り代わった」過去を持ち、時折隠しきれぬ危険性がギラギラと顔を出していく。

 共に“ウソをつき続ける”2人が唯一本音で話せるのが、兄弟水入らずで会うとき。時にぶつかることもあるが、お互いに肩を揉み合ったりとじゃれ合うシーンがちゃんと用意されているのが心憎い。運命を捻じ曲げられた2人の“本当の表情”を観られる場面は、貴重な癒しどころといえよう。

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