伊藤健太郎、飛ぶ鳥を落とす勢いで突き進む 名刺代わりの映画3選

伊藤健太郎、名刺代わりの映画3選

 朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)での好演も記憶に新しい伊藤健太郎。まだ22歳ながらその演技力には定評があり、飛ぶ鳥を落とす勢いで突き進んでいる俳優だ。現在は『ピーナッツバターサンドウィッチ』(MBS)に出演中で、29年ぶりに“現代版”としてリメイクされ、FODにて配信が始まったばかりの『東京ラブストーリー』では主演を務めている。この2020年、さらなる飛躍が期待される伊藤の魅力を堪能できる映画3本を紹介したい。

『デメキン』(2017年)

 本作は、お笑いコンビ・バッドボーイズの佐田正樹による自伝小説であり、後にマンガ化されたものの実写化作品だ。伊藤(当時は健太郎名義)は本作で映画初主演。相棒役に山田裕貴を迎え、荒くれ者たちの大活劇を牽引している。

『デメキン』

 “不良モノ”の作品での伊藤といえば、やはり多くの方が、『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)での彼の姿を思い起こすことだろう。毎話豪華キャストが顔を出し、大いに注目を集めた同作で彼が演じたのは、伊藤真司という役。賀来賢人演じる主人公・三橋貴志の相棒で、準主演といったポジションだ。伊藤はコメディもアクションも軽快にこなし、この役はハマリ役・アタリ役となり、芸名を本名の伊藤健太郎にすることにもなった。

 まだ『デメキン』をご覧になっていない方は、かなり驚くことになるだろう。作品のビジュアルはいかにも“マンガ原作”作品といった印象だが、内容は非常にハードだ。描かれるのは荒くれ者たちの非情な世界。筆者も、ときおり手で目を覆いたくなるようなシーンが何度もあった。ここでも伊藤が体現しているのは、義理人情に厚い男。笑いの要素は少ないが、『今日から俺は!!』での伊藤の原型のようなものが見つけられるかもしれない。

 いまや同じく人気者となった山田裕貴の熱量や、度を越えた極悪ぶりを披露する笠松将、本作でヒロインに大抜擢された今田美桜の瑞々しい演技も味わえる映画とあって、今後も振り返られることの多い作品なのではないだろうか。

『きみと、波にのれたら』(2019年)

 『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)、『夜明け告げるルーのうた』(2017年)などの湯浅政明監督による、劇場アニメ第4弾。声優は片寄涼太と川栄李奈がダブル主演を務め、松本穂香と伊藤が脇を固めることとなり、若手俳優陣の“声によるカルテット”が実現した。

『きみと、波にのれたら』

 伊藤が演じたのは、片寄演じる消防士・港の後輩の川村山葵。消防士としてはまだまだ半人前で、快活でマジメで周囲から慕われる港とは対照的な存在だ。そんな山葵の“頼りなさ”を、伊藤は的確に声だけで表現。もちろん、観客である私たちの目の前には山葵の姿が活写されており、そこからも彼のキャラクター性というものは見えてくるわけだが、ここで声によるリアリティがともなっていなければ画と声はズレてしまう。そうなるとアニメとしての世界観は崩れてしまうわけだ。

 失敗は多いものの、真っ直ぐな性格の山葵。そんな人物像に伊藤は声で生気を与えた。彼が声優を務めるのは本作が初めてではないが、かといって経験豊富というわけでもない。その瞬間瞬間に必要とされる感情を声だけで表現できることは、とうぜん実写作品にも反映されるはずである。これは後続する作品たちで実証済みだ。

 “そばにいるのに、触れられない”ーー本作で描かれるのはそんなラブストーリー。誰もが会いたい人に会うことができない現在、そんな人々をそっと優しく包んでくれる作品でもあるだろう。

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