『キングコング:髑髏島の巨神』は“男前コング”の虜になる! 怪獣バトル史におけるベストバウトも

『キングコング:髑髏島の巨神』は“男前コング”の虜になる! 怪獣バトル史におけるベストバウトも

 2021年5月に北米公開が予定されている『GODZILLA VS. KONG(原題)』。レジェンダリー・ピクチャーズが『GODZILLA ゴジラ』(2014年)を皮切りにスタートさせた「モンスターバース」と呼ばれる壮大なプロジェクトの、ひとつのクライマックスになるであろうと目されている超大作だ。2017年に公開された『キングコング:髑髏島の巨神』は、その前章のひとつとなる、コング登場編である。1933年に作られたオリジナル版『キング・コング』のリメイクではなく、完全オリジナルストーリーとして、現代文明とコングとの衝撃的な遭遇を描いている。

 キングコングほどアメリカで愛されているモンスターはいないだろう。おいそれとリメイクしたり、シリーズ化したりするわけにはいかない、ちょっと聖典めいた雰囲気もある。自他共に認めるオリジナル版の狂信的ファンであるピーター・ジャクソン監督は、2度目のリメイクとなる『キング・コング』(2005年)で、ハッキリとコングに感情移入し、ロマンティックな“美女と野獣”の物語を紡いでみせた。本作『髑髏島の巨神』で監督に抜擢されたジョーダン・ヴォート=ロバーツは、どんなアプローチで臨んだか?

 答えは明快だ。コングをこの星の守護神として、ひたすらヒロイックに、男前に描くことに徹したのである。そして、それは見事に功を奏した。

 物語は1973年、米軍のベトナム完全撤退が発表された日から幕を開ける。特務研究機関“モナーク”の地質学者ランダ(ジョン・グッドマン)たちは、南太平洋に浮かぶ未知の孤島・髑髏島を発見し、MUTO=未確認巨大陸生生命体の極秘調査に向かう。同行するのはパッカード中佐(サミュエル・L・ジャクソン)率いる護衛役の米陸軍ヘリ部隊と、元英国特殊空挺部隊の傭兵コンラッド(トム・ヒドルストン)、そして戦場カメラマンのウィーバー(ブリー・ラーソン)。分厚い雷雲を乗り越え、幻の島に到着した彼らが挨拶代わりに爆雷を撃ち込むと、その眼前に怒れる島の守り神・コングが現れた……!

 このコング登場までの手際のよさ、そこから始まる容赦ない「神罰」の畳み掛けが素晴らしい。手掴みでヘリをぶん投げ、殴り落とし、握りつぶし、乱暴狼藉をはたらく人間どもを電光石火の勢いで退治していく。観ながら思わず「いてまえ! 愚かな害獣を叩き潰せ!!」と快哉を叫んでしまう名場面である(こっちも人間なのに)。

 ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督の最大の長所は、その「絵心」だ。夕陽をバックに戦闘ヘリの群れを待ち受けるコング、炎のなかでサミュエル・ジャクソンと睨み合うコング、夜霧の奥からしっとりと姿を現すコング……『地獄の黙示録』(1979年)や『シン・レッド・ライン』(1998年)といった名画にモンスターを違和感なく溶け込ませてしまうような抜群のビジュアルセンスが、本作では全編にわたり発揮されている。「とにかくコングをカッコよく描くこと」という命題において、ロバーツ監督は120%以上の成果を叩き出してみせた。

 フルCGで描かれたコングは、その巨大感、重量感、繊細な表情などにおいて、アナログ特撮とは別次元の境地に達している。特に毛並みの表現が素晴らしく、乾いているのか、濡れているのか、炎で焼け焦げているのか、といった場面ごとに変化する質感のディテールも含めて見事である。モーションキャプチャーを担当したテリー・ノタリーとトビー・ケベルの堂々たる芝居に、筋肉の動きまで緻密に構築されたCGアニメーション、スケール感を増幅させる多彩なカメラワークが加わり、コングにかつてない実在感を与えられた。その巨大感はIMAXスクリーンの画郭さえ窮屈に感じさせたほどだ。「ああ、映画の画面ってまだまだ小さいんだな」と。

 コング以外のモンスターたち――巨大水牛、巨大グモ、巨大イカといった東宝特撮イズム溢れるクリーチャーたちの表現も、同じくアップグレードされており、なおかつ絶妙な塩梅でグロテスクさが抑えられているのもポイントだ(そのへん、ピーター・ジャクソンとは違う大人の仕事である)。コングvs大イカの戦いはもちろん『キングコング対ゴジラ』(1962年)の大ダコ登場シーンのオマージュであると監督自ら公言している(さらに、パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』(2003年)への目配せも)。

 代わりにグロ度満点なのが、コングの天敵として登場する新怪獣スカルクローラーである(名前の由来は本編を観てのお楽しみ)。地球の生態系の守護神であるコングが、人間よりも敵視するこの怪獣は、鳥のガイコツのようでありながらマッチョな人間の遺伝子も入っているような不気味さがあり、その点では『シン・ゴジラ』(2016年)のゴジラ最終形態もちょっぴり思い出させる。上半身しかないような外見で、消化器官がどうなっているのかわからないようなデザインが、気味悪くてイイ。

 そんなスカルクローラーとコングの一騎討ちを描く大迫力のクライマックスは、ここ10年ほどのCG怪獣バトル史においてもベストバウトと言えるのではないだろうか。『GODZILLA VS. KONG』では、この名勝負を超えるファイトを見せてくれるのか、楽し怖しである。

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