『キングコング:髑髏島の巨神』は“男前コング”の虜になる! 怪獣バトル史におけるベストバウトも

『キングコング』で“男前コング”の虜に

 つい怪獣の話に熱中してしまったが、本作は人間側のキャストも充実している。何しろジョン・グッドマン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・C・ライリーという「どなたが今回のコング役ですか?」と問われてもおかしくない顔ぶれが一堂に会しているのだから、怪獣バトル以外にも目を奪われっぱなしだ。特に、コング×スカルクローラー×人間という三つ巴の構図を形作る狂気の軍人パッカード役のサミュエル・L・ジャクソンは、もはや立派なヒール怪獣と呼んで差し支えない。

 一方、第二次大戦時から島に取り残されて生きてきた米軍兵マーロウ役のジョン・C・ライリーも、本作を代表する顔と言える。ユーモラスな佇まいで緊張感をほぐす役割とともに、この苛烈な“対自然”の物語において人間の善性を体現する貴重なキャラクターであり、その顔面力も含めて絶妙なキャスティングだ。湯浅政明監督のアニメーション映画『マインド・ゲーム』(2004年)に登場する、クジラの腹に30年閉じ込められた“じーさん”(声:藤井隆)も思い出させる。

 マーロウがこの島の苛酷な環境で生き延びることができたのは、敵と殺し合うことを自らやめた人間だからではないか……。観ながらそんな思いを馳せることができるのも、作り手が「自然と人間」「戦争と人間」「戦争と自然」といったテーマをじっくり煮詰め、シナリオにしっかり芯を通しているからだ。しかも、すこぶるつきに面白い怪獣映画として。そこが素晴らしい。

 もうひとつの本作の主役といえるのが、髑髏島の荒々しく雄大な自然美である。島内のシーンは、ハワイ、オーストラリア、ベトナムの3カ所を組み合わせて撮影されたそうだが、特にクライマックスを含めたベトナム撮影パートはまさに「人跡未踏の秘境」感に溢れ、映画にマジックを与えている。ベトナム戦争終結直後の物語をベトナムで撮る、という歴史が一周回った感も、本作の新鮮さに一役買っているのかもしれない。

■岡本敦史
ライター。雑誌『映画秘宝』編集スタッフとして、本誌のほか多数のムックに参加。主な参加作品に『別冊映画秘宝 サスペリアMAGAZINE』『映画秘宝EX 激闘! アジアン・アクション映画大進撃』『塚本晋也「野火」全記録』(以上、洋泉社)など。劇場用パンフレット、DVD・Blu-rayのブックレット等にも執筆。Twitter

■放送情報
映画『キングコング:髑髏島の巨神』
フジテレビ系にて、6月27日(土)21:00~23:10放送
出演:トム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン、ジョン・C・ライリー
監督 :ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

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