酷評相次ぐQuibi、動画配信サービス業界のゲームチェンジャーとなるか? 実際に作品を観てみた

Quibi、動画配信業界に革命を起こすか?

 コロナ禍で外出自粛が続く中、NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスの需要が高まる中、アメリカでは4月6日に新たな動画配信サービスが誕生している。「Quibi」だ。スマートフォンに特化した動画配信サービスとして、1800億円のもの資金を集めローンチされた「Quibi」の初動の反応から、新たなゲームチェンジャーとなるか読み解いていきたい。

「Quibi」とはどんなサービス?

 「Quibi」はドリームワークス・アニメーションの前CEOであるジェフェリー・カッツェンバーグが創業。eBayやヒューレット・パッカード・エンタープライズのCEOを歴任したメグ・ホイットマンがCEOを務めており、配信サービスの戦国時代と呼ばれる中、他社と差別化された、スマートフォンに特化した機能にローンチ前から大きな注目を集めていた。

This Is Quibi

 iPhoneまたはAndoroidのスマートフォンがあれば利用できるQuibi。Media Innovationによれば、配信初週で100万ダウンロードを突破している(参考:動画配信サービスの「Quibi」、1週間で100万ダウンロード突破 | Media Innovation)。ローンチまでに登録していれば90日無料という特典もあったからだろう。プロモーション動画には、リース・ウィザースプーン、アントワーン・フークア、ピーター・ファレリー、ギレルモ・デル・トロなど錚々たる面々が登場し、いつでもどこでもスマートフォンで楽しめる4分~10分の質の高いコンテンツを売りにしている。(広告付きであれば)$4.99という動画配信サービスとしては最安の価格も魅力的だ。現在配信作品は25作品程度に留まるが、年内に200以上に増える予定だ。動画配信サービスに対してネガティブだったスティーヴン・スピルバーグも参入するから驚きである。

実際にQuibi作品を観てみた

 日本にはまだ上陸していないためQuibiを利用することはできない。ただ、朝日放送HDがQuibiに投資したと日経クロステックにて報じられている(参考:朝日放送グループHDがファンドを通じ米国の動画配信事業者に出資 | 日経クロステック(xTECH))ことから、もしかしたら日本上陸も近いかもしれない。現状、アプリの操作性などを含めて体感することは出来ないが、YouTubeのQuibi公式チャンネルでいくつかの作品について視聴可能なので早速観てみることにした。

Most Dangerous Game | FULL EPISODE In Landscape Mode| Quibi

 まず目を引くのは、リアム・ヘムズワース主演のリメイク作品『Most Dangerous Game(原題)』だ。Quibi最大の売りの一つである「横向きモード」と「縦向きモード」の両方がYouTubeでは視聴可能になっている点が非常にユニーク。ひとまず横向きモードで視聴を開始。約7分間でクリストフ・ヴァルツの元にカウンセリングに訪れたリアム・ヘムズワースの会話劇が続く。ヘムズワースに怪しい依頼をするヴァルツは、安定のヴァルツだなと思っていたら7分経ってしまった。あっという間だ。ストーリーの序章の序の字もまだなのでは?と感じる。『Most Dangerous Game』は15チャプターあるので、トータルで105分。導入として非常に面白そうだっただけに「7分間で分ける必要はあるのか……?」と少し感じてしまった。

Most Dangerous Game | FULL EPISODE in Portrait Mode | Quibi

 一方、縦向きモードはどうだろうか。これが非常に好みが分かれるところだ。YouTubeでも縦向きモードは体感できるが、はっきり言って画面内の情報量が限られすぎている印象が否めない。撮影側も縦向きで観ても、演出が伝わるように撮影しなければならなかったのではないかと思う。そのため、細かい演出はおそらく画面中央にすべて表示しなければならないのではないだろうか。実際のQuibiのプロモーション動画を観る限り、スマートフォンの向きを変えるだけでスムーズに縦向きと横向きを変更できる機能が売りだが、ドラマに関しては映像や役者の演技が素晴らしいだけに縦向きの必要性があまり感じられない。

 『Most Dangerous Game』だけではなく、マイカ・モンローとデイン・デハーン出演の『The Stranger(原題)』、アナ・ケンドリック主演の『Dummy(原題)』も観たが、いずれも同じ感想だ。俳優やクリエーターとしては作品製作や出演のフィールドが広がるチャンスだが、作品が良いだけに、これをNetflixやAmazon Prime Videoで観たいという思いがよぎる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる