『映像研には手を出すな!』“個性”を”役割”にシフト 際立つキャラクターに隠された魅力

『映像研』キャラクターに隠された魅力

 アニメーションは、1人では創れない。大勢のクリエーターが結集し、役割を分担しそれぞれの作業と向き合い、初めて作品として完成する。私たちが普段何気なく見ている30分のアニメでも、その裏には血と汗の滲むような努力が隠されている。

 そんなアニメーションを自分達の力で創り上げるべく集まった3人の女子高生を主人公に展開する『映像研には手を出すな!』(NHK総合)。原作は大童澄瞳、アニメーションの出来上がる過程を描いたマンガとして唯一無二の独創性を放つ本作を、同じく斬新な表現技法で国内のみならず海外でも注目を集める湯浅政明監督がアニメ化した。マンガからアニメへ、まさに作品の描こうとする「動くアニメーションの魅力」を視聴者に伝え、現在最新第6話を心待ちにするファンがSNSを中心として大いに盛り上がっている。

 本作では前述のとおり、3人の女子高生が「映像研究同好会」略して「映像研」を立ち上げ、アニメーション制作に奮闘する姿が描かれているが、3人のキャラクター性それぞれが個として尖っており、また得意とする分野も異なる。本コラムでは、主要人物である浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメのキャラクターとしての立ち位置とアニメ制作における役割を考え、総括的に「アニメーションづくりを描くアニメ」としてどのように作品を引き立たせているのかにスポットを当てていく。

 「映像研」の中で背景設定を担当する浅草みどりは、自身の住む団地が複雑に入り組んだ構造をしていたために周囲を探検し、スケッチブックに発見したことを描き込んでいた幼少期の過去を持つ。また、同じ頃に何気なく見たアニメーションが心躍るような空想世界を表現していたことがきっかけで、アニメーションの仕組みや設定にも関心を持つ。そんなバックグラウンドにより培われた人並み外れの好奇心により、空想力や空間把握能力も身につけ、高校生になる頃には抜群の観察眼と想像力、アニメーションへの強烈なあこがれを兼ね備えるようになる。

 思いの強さから生み出される創造力は、時に現実をも凌駕する。アニメではしばしば現実世界と想像世界が交錯する表現がなされているが、その根源となっているのはまさに浅草の頭の中に存在する莫大な「バックボーンを生み出す力」だろう。彼女に関しては、過去の体験がきっかけで今のキャラクター性が構成され、背景設定担当という役割として能力を発揮している。

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