松坂桃李に訪れる苦悩と不安とは 『パーフェクトワールド』が迎えた、1つの大きな山場
樹(松坂桃李)に内緒で介護の勉強に明け暮れていたつぐみ(山本美月)は、疲労が蓄積して樹の目の前で駅のホームから転落してしまう。間一髪のところで助かったものの、どうすることもできなかった自責の念にかられる樹。5月21日に放送された火曜ドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)第5話は、ドラマ中盤の1つの大きな山場を迎える。車椅子に乗った自分ではつぐみを守ることができないのだと痛感する樹に、つぐみの父・元久(松重豊)からの「娘と別れてほしい」の言葉。さらに追い討ちをかけるように、樹の身にも異変が起きるのだ。
脊椎損傷によって下半身不随の樹は、これまでも車椅子に座り続けることからできる褥瘡に苦しむ姿であったり、排尿障害に伴った尿路感染症の不安を抱えていることが語られるなど、様々な合併症と向き合う様子が描き出されてきた。今回彼を苦しめるのは、脊髄空洞症。国の指定難病にも登録されているこの病は、損傷した脊髄に脳脊髄液が溜まることで手のしびれなどを感じたり、麻痺してしまう。しかも受傷後の数カ月から十数年と長い期間をかけて進行するとのことだ。検査の結果、空洞症ではないとわかる樹だが、20歳の頃に事故に遭い脊椎損傷となってから、設定上29歳の彼は約10年、そしてこの先もこうした不安とともに生きていかなければならないのだろう。
もうひとつ、劇中で樹は熱が下がらずに摘便の必要があることを医師から言われ、焦るシーンがあった。肛門から直接指を入れて直腸に溜まった便を取り出す摘便。頚椎損傷患者を主人公にしたフランス映画『最強のふたり』の中でも描かれていたこの医療行為は、患者にとってはプライドにかかわる部分であるのかもしれない。第1話の食事シーンでのつぐみの「好きなら関係ないよ」という発言がここにつながるというわけだが、自分がやりますと言い出すつぐみに、きつく当たる長沢(中村ゆり)。これはつぐみに見られることを避けたいという樹の気持ちを汲んでのことだろう。元久から土下座されるところを目撃するシーンでの表情といい、長沢の存在はライバルという位置付けを超え、ドラマの1つの核と言って過言ではないかもしれない。