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『悪人』『横道世之介』『怒り』など相次ぐ映画化 吉田修一作品が映画監督を魅了する理由とは

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 吉田修一の小説は、『悪人』(2010)、『横道世之介』(2013)、『さよなら渓谷』(2013)、『怒り』(2016)など数多く映像化されてきた。今後に関しても『犯罪小説集』を瀬々敬久監督が『楽園』のタイトルで、綾野剛を主演に映画化して今秋公開の予定で、「鷹野一彦シリーズ」を羽住英一郎監督が『太陽は動かない』として2020年に映画化し、WOWOWでの連続ドラマ化もすると発表された。

『怒り』(c)2016映画「怒り」製作委員会

 吉田は、純文学を対象とした芥川賞を受賞した作家であると同時に、犯罪を扱ったミステリー寄りの作品も多い。心理の細やかな扱いにみられる文学性と、起伏のあるドラマというエンターテインメント性をあわせもち、映像化原作に選ばれることが多い作家である点は、角田光代や、近年の中村文則とも近い受け入れられ方だ。なかでも吉田作品の特徴となっているのが、「場所」の魅力だ。

吉田修一『犯罪小説集』(KADOKAWA 刊)

 映画『楽園』の瀬々監督は、原作の『犯罪小説集』が昨年11月に文庫化された際、巻末解説を担当した。彼は、「吉田修一氏の小説には登場人物たちの生きる空間がいつも丹念に描かれている。以前から、そこに強く惹きつけられてきた」と書き始める。そのうえで、博多から峠を越えた地方に主人公が住んでいた『悪人』、地方から上京した大学生の高揚感があった『横道世之介』、東京近郊の渓谷沿いの町に漂う寄る辺ない空気を描いた『さよなら渓谷』など、映像化された作品における人物と場所の結びつきかたの魅力を語っていた。

 解説文からは吉田の小説が、この風景のなかでこの人物が経験する物語を撮影したいという映画製作者の思いをかき立てるものであることが伝わってくる。瀬々は、吉田作品の登場人物が、地縁、血縁、仕事関係の縁、人々の噂話や他者への視線など、世間のなかで生きていることを指摘した。このことは、吉田本人が雑誌『ダ・ヴィンチ』2016年10月号(KADOKAWA/メディアファクトリー刊)のインタビューで「僕の小説の書き方は、最初に場所を決めるんです。場所を決めたら、そこにいそうな人たちが浮かんでくる。あとはその人たちがどういう人で、どういう生き方をしてきたかを書いていけば、おのずと物語は生まれます」と語っていたことと響きあう。

 犯罪を題材にした場合、事件がどのように起きたかという事実や、犯人は逮捕され裁かれるのかという捜査の行方が大きな問題となる。だが、事実認定や法的処罰とはべつに、あいつがやったに違いない、あの人がそんなことをするはずがないという疑念や信頼、あらゆるプラスとマイナスの感情が渦巻くのは避けられない。

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