デル・トロ版『ピノキオ』は現代社会を照射する物語に? 制作陣の絶妙な組合わせから考える

デル・トロ版『ピノキオ』を考える

 過日、かねてより噂されていたギレルモ・デル・トロ監督による『ピノキオ』の制作が正式に発表された(参考:https://variety.com/2018/film/news/guillermo-del-toro-pinocchio-netflix-1202987621/)。一時期はお蔵入りかというニュースも飛び交ったが、無事制作が発表されてファンは安堵していることだろう。 

 本作は劇場用作品ではなくNetflixでの配信作品で、ストップモーションアニメーションで作られるという。多くのアニメーション作品に影響を受けていることを公言しているデル・トロだが、制作として関わることはあっても監督としてアニメーションを手がけるのはこれが初めてだ。一体どんな作品になるのか、ファンとして期待せずにはいられない。

 『ピノキオ』という題材を、ストップモーションで作ることは作品が持つテーマを考えてみても非常に意義深いことだ。そして、今のデル・トロが手がけるということにも大きな意義があると思える。デル・トロの『ピノキオ』は果たしてどんな作品になるのか考えてみたい。

 残酷で理不尽なオリジナルの『ピノキオ』

 『ピノキオ』は、1883年にイタリアで出版されたカルロ・コッローディの児童文学『ピノッキオの冒険』を原作としている。今日この作品が有名なのは、1940年に公開されたディズニーのアニメーション映画によるところが大きいが、そのストーリーは、操り人形だったピノキオが女神から生命を授かり、心優しいゼペットおじいさんとコオロギのジミニー・クリケットに見守られながら、様々な失敗を経て人間となる物語として記憶している人が多いと思われる。

 だがディズニー版のストーリーはかなり脚色されている。ピノキオは元々意思を持った丸太で、気味悪がったサクランボ親方がちょうど訪ねてきたジュゼッペじいさんにそれを譲る、そしてジュゼッペじいさんが一本の丸太から作った操り人形がピノキオという設定だ。その他多くの相違点があり、例えばディズニー版ではピノキオは素直な良い子として描かれているが、原作ではイタズラ好きで、不真面目な性格で学校にも行きたがらない。映画ではピノキオを導く良心であるコオロギのジミニー・クリケットも序盤でピノキオに殺されてしまうなど(後に復活するが)、映画版と原作では相当に雰囲気が異なる。

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