話題作となった『義母と娘のブルース』、賛否が別れた『高嶺の花』 夏ドラマに見るテレビドラマの形式

夏ドラマから考える“テレビドラマ”という形

 夏クールのドラマを観ていて、いよいよ“テレビドラマ”という形式が、難しいところにきていると感じた。まず、素晴らしかった作品を紹介する。

 『透明なゆりかご』(NHK)は、小さな産婦人科を舞台にした医療ドラマだが、母性と出産の美化一辺倒ではなく、中絶の問題もしっかりと扱う姿勢に志の高さを感じた。高校生の出産や、幼女の性的虐待など、描かれるテーマは重たいが、それを見せる演出は静かで淡々としており、だからこその緊張感と凄みがあった。脚本を担当した安達奈緒子は『リッチマン、プアウーマン』等の月9(フジテレビ系月曜9時枠)の華やかなドラマの中で「働くとはどういうことか?」「子どもを産むとはどういうことか?」といったテーマを真摯に追求してきた脚本家で、月9で書いていた際には、それが違和感となって現れていたが、真面目な作りのNHK作品とは、とても相性がよかった。

 『dele』(テレビ朝日系)は、山田孝之と菅田将暉が主演を務めるバディモノで、何より二人の掛け合いが楽しかった。物語は故人のスマートフォンやパソコンの中にある「デジタル遺品」を題材とした1話完結のドラマで、毎回面白いアイデアが展開された。話数が少なく、あっけなく終わってしまったところがあるので、できれば続編を待ちたい。

話題作となった『義母と娘のブルース』

『義母と娘のブルース』(c)TBS

 話題作という点では『義母と娘のブルース』(TBS系)は外せないだろう。綾瀬はるかが演じるキャリアウーマンの女性・亜希子と、血のつながらない娘・みゆき(横溝菜帆、上白石萌歌)との10年間を描いた作品で、話数を重ねるごとに視聴率が上昇していった。脚本は『白夜行』や『わたしを離さないで』といったTBS系の綾瀬はるか主演ドラマを手がけてきた森下佳子。長い歳月の中で、義母と娘の親子関係の変化を描くという時間にこだわったストーリーは、森下ならではのもので、特に、娘のみゆきが高校生になってからの展開は、上白石萌歌のみずみずしい演技もあって、一気に引き込まれた。

 ただ、演出に関しては、わかりやすさを優先するあまり、単調すぎるのではないかと気になった。これは岡田惠和・脚本の『この世界の片隅に』(TBS系)にも同じことが言える。どちらも脚本と役者の演技は面白かったのだが、若干、説明過多で、もう少し映像で見せる場面があってもいいのではないかと思った。これは「万人にわかるものに仕上げないといけない」という、民放プライムタイムのドラマが抱える限界ではないかと感じた。

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