少女漫画原作映画はもっと評価されるべきーー『プリンシパル』が操る“理想と現実”の絶妙なバランス

『プリンシパル』理想と現実の絶妙なバランス

 今年も少女漫画の実写映画化は止まらない。ここ数年、毎年10本前後のペースで公開され、主要ターゲットとなる学生の長期休み期間をねらって公開されることが多い中、先陣を切って3月頭から上映が開始されたのが映画『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』。まったく奇を衒わない恋愛・友情エピソードの数々に、正統派“キラキラ映画”であると宣言したくなるほどだ。

 東京で居場所をなくした主人公・住友糸真(黒島結菜)が、離婚した父の暮らす札幌に引っ越し、転校先の学校で初日から校内ツートップのモテ男子2人の間で揺れ動く。「転校」に「学校一のモテ男子」、そして「俺様キャラ」と「王子様キャラ」の登場。さらにこれを単なる三角関係に留めず、友人や教師を交えた五角関係や六角関係に発展させたり、親同士の再婚によって片想い相手と突然家族になってしまったりと、少女漫画的要素のオンパレード。

 ストーリーラインこそ、いかにもな理想像を余すところなく詰め込みながら、それ以外の部分で現実的な部分を生み出していく。あたかも「少女漫画は理想郷に過ぎない」という冷めた考え方を忘れ去らせてくれるかのように。登場人物が誰ひとりとして完璧じゃなく、映画としては破綻しているのではないかと思えるほどにドロドロと交錯していく人間関係。“キラキラ映画”に欲しかったのはこういうリアリティーだったのかもしれない。

 2013年に公開された岡田将生と長澤まさみ主演の『潔く柔く きよくやわく』、昨年旋風を巻き起こしたドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)に続いての、いくえみ綾原作の実写化だけあって、その妙に慌ただしくもあざといほどのリアリティーがユニークで心地よく映る。転校早々に舘林弦(小瀧望)と言い争う糸真のセリフであったり、桜井和央(高杉真宙)と初対面シーンでのやり取り、国重晴歌(川栄李奈)が叫びながら廊下をダッシュするところも実にいくえみ作品らしい。

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