少女漫画原作映画はもっと評価されるべきーー『プリンシパル』が操る“理想と現実”の絶妙なバランス
それらと同時に本作にリアリティーをさらに強めるのは、ピンポイントで定められたロケーションだ。それも大都会・東京ではなく、地方都市・札幌という味わい。徹底して札幌市内で行われたロケーションは、大通り公園や藻岩山展望台などの観光名所から何の変哲もない住宅街、さらに冒頭の広大な雪原の様子まで幅広く札幌という街の魅力と空気感を映し出す。
監督の篠原哲雄といえば夕張を舞台にした『スイートハート・チョコレート』、釧路を舞台にした『起終点駅 ターミナル』と、北海道の情景を捕まえるのに関してはお手の物だ(もしやこれらも“北の三部作”と言っていいかもしれない)。観光要素と地元民に感化させる光景を織り交ぜ、さらにTEAM NACSのリーダー森崎博之もメインキャストで出演するという、生粋の“ご当地映画”としてのイメージづくりは、“理想郷”だった少女漫画の世界と観客との距離をより近いものにさせる。
もっぱらこの3月にはバリエーション豊かな少女漫画原作映画が毎週のように公開されていく。幅広い年代層をターゲットに据えた広義の少女漫画で音楽青春映画の『坂道のアポロン』に、恋愛そっちのけで部活に熱を上げる『ちはやふる -結び-』、そして恋愛要素だけにフォーカスを置き理想郷としての“キラキラ映画”を貫く『honey』。それ以降も人気の高い作品が相次いで映画化されるだけに、そろそろ一種のプログラムピクチャーとしてのニュアンスで、これらの作品群が高く評価されてもいいのではないだろうか。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■公開情報
『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』
全国公開中
出演:黒島結菜、小瀧望(ジャニーズWEST)、高杉真宙、川栄李奈、谷村美月、市川知宏、綾野ましろ、石川志織 中村久美、鈴木砂羽、白石美帆、森崎博之
原作:『プリンシパル』いくえみ綾(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:篠原哲雄
脚本:持地佑季子
音楽:世武裕子
配給:アニプレックス
(c)2018映画「プリンシパル」製作委員会 (c)いくえみ綾/集英社
公式サイト:http://principal-movie.jp