>  > 『HiGH&LOW』評論家座談会【前編】

成馬零一 × 西森路代 × 加藤よしきが徹底討論!

『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【前編】 「日本発クリエイティブの底力を見た!」

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 EXILE HIROが企画・プロデュースを務めた『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』が、現在公開されている。同作は、リアルとファンタジーがコラボした世界観で、映画、ドラマ、動画配信、コミック、SNS、アルバム、ライブなど、あらゆるメディアを巻き込んだ総合エンタテインメント・プロジェクト『HiGH&LOW』シリーズの最新作で、先日は早くも次回作にして最終章となる『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』のポスタービジュアルも発表されたばかりだ。

 これまでの日本映画の常識を打ち破るスケールに、多くの識者らも驚嘆の声を挙げている同シリーズ。一体どんなところがすごいのか、リアルサウンド映画部でも執筆中のドラマ評論家の成馬零一氏、女性ファンの心理に詳しいライターの西森路代氏、アクション映画に対する造詣の深い加藤よしき氏の三名に、その魅力をあらゆる角度から徹底的に論じてもらった。

成馬「次回作では、大人対子どもの戦いを描かざるを得ない」

『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』

 成馬:僕はドラマ評論家なので、地上波で放送されたドラマは可能な限り、すべて観ているんですよ。『HiGH&LOW』もその流れで、ドラマ『HiGH&LOW THE STORY OF S.W.O.R.D.』のシーズン1から観始めました。僕自身は、第1話を観た瞬間から衝撃を受けて、これは新しいものが出てきたと驚いたのですが、世間的な評価は真っ二つに分かれていましたね。なにせ、第1話は延々とアクションで繋いでいくだけで、状況説明をするだけで物語はまったくない。その潔さが超カッコイイと思ったんですけれど、斬新すぎてついてこれない視聴者も多かったんだと思います。『HiGH&LOW』シリーズは、レベルが低いところは本当に低くて、たとえば演技の質とか、会話劇とかは、観ていられないような部分もある。だけど、音楽と美術とアクションはずば抜けていて、それだけでも十分評価に値します。

 日本のドラマ特有の貧乏くささが最初からなかったので、これはきっと想像を超える“なにか”が生まれる、EXILE TRIBEという複雑でよくわからないグループが、そのコンセプトを明確に示す代表作と呼べるものになる、という予感は、当初からありました。ただ、ドラマに対する世間的な評価は、シーズン2になってもあまり振るわず、あまり話題になっていなかった。やはり、ブレイクしたのは映画『HiGH&LOW THE MOVIE』からだと思います。そのブレイクの仕方は予想外だったところもあるけれど、そこで初めてLDHが本当にやりたかった、総合エンターテイメントとしての『HiGH&LOW』が形になった感じがしました。

西森:私は2015年の『HiGH&LOW THE STORY OF S.W.O.R.D.』が始まったのと同じぐらいに、仕事で三代目J Soul Brothersのルポを手がけたのがきっかけで、EXILE TRIBEに関心を持ちました。そのときに大宅文庫からごっそり資料を送ってもらって、メンバーそれぞれにキャラクターがあって面白いなと感じていたので、『HiGH&LOW』に対して心理的なハードルはありませんでした。でも本当の意味で面白さがわかったのは、映画が公開された時に周囲の友達とかもワッと盛り上がったのがきっかけかもしれません。やっぱり周りに語り合える友達とかがいると、相乗効果がありますね。『HiGH&LOW』シリーズは複雑なキャラクターものでもあるし、世界観も独特なので、すごく“語り合える”作品なんですよね。私も含めていろんなオタクファンにも受けたのは、そういう部分だと思います。しかも、LDHの側は想定外だったファン層に対して、人気漫画家集団のCLAMPとコラボして「HiGH&LOW g-sword」のグッズを作るなど、応援している人の気持ちを汲み取る対応も素晴らしかった。

加藤:僕は、完全にアクションから入りました。知り合いの映画ファンや映画ライターから、「半端じゃないアクションをやってるから『HiGH&LOW THE MOVIE』は絶対に観た方が良い」って勧められて、そういえばEXILEが2009年に発表した「ふたつの唇」のMVで、すごいアクションをやっていたことを思い出して、ちょっと観てみようかなと。実際に観てみたら、これまで観てきた世界中のアクション映画でも類例を見ないような、斬新なアクションが展開されていて。『HiGH&LOW THE MOVIE』の最後のコンテナ街の大乱闘は、世界規模で見ても、はじめての試みだったと思います。あれほど広大なオープンセットで、7つの勢力が衣装まで揃えていて、それぞれ戦い方のスタイルも違って、しかも入り乱れて戦っているのを、動きのあるカメラワークで捉えていく。

 よく観ると、主役級のキャラクターが戦っている後ろで、準主人公級のキャラクターが戦っていたりして、ものすごく情報量が多い。EXILE TRIBEのメンバーは半端じゃない身体能力があって、それを極限まで活かした素晴らしいアクションでした。気づけばドラマ版を最初から何度も見直して、『HiGH&LOW THE LIVE』に足を運び、サウンドトラックの『HiGH&LOW ORIGINAL BEST ALBUM』を昨年から今日まで聴き続け、昔のEXILEの音源まで引っ張り出して聴いています。まさにHIROさんの思うツボ。おふたりは最新作『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』はどうでしたか?

西森:キャストが100人超えで、新しい俳優がいっぱい出てきたのは嬉しかったですね。しかも、「わぁ、こういう人を連れてきてくれて嬉しい」みたいツボを押さえてあって。舞台でやってる人とか、BOYS AND MENとか、佐野岳さんとかいて。BOYS AND MENからの参加の二人は、普段から金と銀がテーマカラーの二人だったので組み合わせもいいし、和のパフォーマンスも多かったので、達磨一家というのも「わかってるな」上でのキャスティングだなと思いました。佐野岳さんも、RUDE BOYSに入るべくして入ったという感じで、アクションも本当にかっこ良かったです。不良たちが身体能力を駆使して戦う作品って、これまでもありましたが、『HiGH&LOW』シリーズは殺陣やアクションを学んできた若手俳優や演技に対してのエネルギーを持て余している俳優たちにとっての受け皿になると思うんです。『HiGH&LOW』シリーズは彼らの可能性を切り開く大作になっていくのではないでしょうか。日本の俳優界の未来を担う作品として、すごく感動しましたね。

 もう1つ、カーアクションも衝撃的でした。ハイレベルなカーアクションは今、韓国が技術力を伸ばしているとのことで、たとえば『アイアムアヒーロー』のカーアクションも韓国で撮影していて見事でしたし、海外の技術を取り入れることも映画にとっていいことだと思います。韓国で撮影するのには、条例などもあって国内のロケ地の選定が難しいということなんかも事情としてあると聞きました。でも本作は、日本国内でロケ地を探して、日本のアクション監督やスタントチームを起用してあの映像を作り上げている。日本発信のクリエイティブの底力を見せようという意思が強く感じられて、ある意味では物語以上に伝わってくるものがありました。

加藤:アクションがより洗練されていましたね。格闘アクションもそうですし、西森さんが指摘したカーアクションについては、日本映画史上ぶっちぎり1位のクオリティだと思います。かつて西武警察などを担当していた伝説のカースタント・チームと連携していて、ワイヤーを使って走っている車に飛び移ったり、人がブンブン振り落とされたりという、今まで洋画でしか観たことがないようなシーンがこれでもかと詰め込まれています。それを日本人の俳優が、日本の風景の中で、日本の楽曲に乗せて展開するというのは、非常に新鮮でした。たぶん、海外の人が観てもびっくりするクオリティーだと思います。

『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』

 個々の格闘シーンだと、岩ちゃんさん(岩田剛典)演じるコブラとNAOTOさん演じるジェシーの戦いは素晴らしくて、日本の格闘アクションのレベルをひとつ上にあげたといえるほどの仕上がりでした。なぜそこまで評価できるかというと、最近の日本のアクションは全体的にレベルが上がっていて、それは俳優さん個人の努力による部分が大きかったと思うんです。でも、撮る側がアクションに慣れていないと、せっかくのアクションも活かしきれない。ところが『HiGH&LOW』は、アクション監督に大内貴仁さんを迎えているのに加えて、久保茂昭監督自身も大のアクション映画ファンで、その見せ方をよくわかっている。どれだけアクションができる俳優がいても、カット割りなどの編集で台無しになったりすることは、国内外問わずによくあることなんですが、『HiGH&LOW』に関してはアクションに対するストレスをまったく感じない。それどころか、爽快感しかありません。これは、アクション映画を撮るうえでのスキームが確立されたということで、そういう意味でも日本映画界にインパクトを与えたはずです。

西森:本作のアクション監督の大内さんとも縁の深い谷垣健治さんと、韓国アクション映画出身のリュ・スンワン監督が対談で、「アクションは人物から出るもの」って言っていたのがずっと記憶に残っていたのですが、コブラ対ジェシーの対決は、ふたりの俳優としての背景も含めて楽しめるところも良かったと思います。俳優自身の性格や立ち振る舞いをもとにキャラクターを作って、しかもそのキャラクターを踏まえたアクションで、あれほどクオリティーの高い格闘シーンができたという部分にぐっときました。

加藤:『HiGH&LOW』シリーズは俳優自身がキャラクターに肉付けしているのが良いですよね。脚本に書いてあることは踏まえつつも、その場で自分の中から出てきたセリフを大事にしている。たしか、ジェシーの「神に感謝しろよ」もアドリブだったそうで。そういう意味では、LDH所属のアーティストたちの演技スキルも、どんどん上がっているのかもしれませんね。それが、もともと得意なアクションと結びついて、良い相乗効果が生まれている。ただ、彼らの格闘にはひとつ大きな問題があって、タイマンの決着がなかなか付けられないんですよね。ストーリー的にも、キャラクター的にも、どちらかが圧倒的に勝つという結末にはできない。事情はわかるんですけれど(笑)。

西森:『HiGH&LOW THE MOVIE』も『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』も、誰かが「止め!」って言ったら、みんなちゃんと止めますからね(笑)。あくまでも彼らの乱闘はケンカだから、ケンカは痛み分けにしないといけないという倫理があるのかなと。あと、1年に1回の祭りみたいなものなので、パーっと発散して終わりにしたいのかなって。

成馬:『HiGH&LOW』の戦いは、九龍グループの大人たちとの戦いと不良たちのケンカとでは、リアリティラインが明確に分けられているのも特徴ですよね。前者では人が死ぬけれど、後者では殴り合って絆を深めて終わるという人が死なない戦いになっている。これが商業的な都合ではなく作品のテーマとも直結している。スピンオフの『HiGH & LOW THE RED RAIN』を観て感心したのは、ガンアクションがメインで、舞台も本編とは違うリトルアジアが舞台で、大人側に近い雨宮兄弟が主人公だったから、人が死ぬ戦いを繰り広げているんですよね。結局、長男の尊龍は死んじゃうし、九龍グループのヤクザたちは、雨宮兄弟によっておそらく皆殺しにされている。ドラマから映画一作目まで続いていた人が死なない戦いというリアリティラインを、大きく踏み越えてきたんです。

 その後だったので、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』がどうなるのか楽しみにしていたら、琥珀と九十九と雨宮兄弟という、SWORD地区の連中とは少し違う位相にいるお兄さんグループが、九龍の刺客と対峙して、即死レベルの攻防を繰り広げていた。途中で九龍会との戦いは決着がついて、不良たちのケンカに戻るかと思わせるけど、九龍は健在で、最終的に、九龍グループ対SWORD地区という構図になっていく。ここまで描いてしまったら、もう、大人対子どもの戦いを描かざるを得ないわけです。こうなると、さすがに痛み分けということにはできないので、次回でちゃんと物語も終わらせなければいけない。その構造に、MIGHTY WARRIORSやプリズンギャングといった新しい勢力がどう関わっていくのかも、見どころかと思います。

西森:九龍グループの九世龍心が「俺たちは隠蔽ができるんだよ」っていうセリフは、大人対子どもという構図を象徴していますよね。だから、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』は「隠蔽」との戦いになるんじゃないでしょうか。

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