『レンタル・ファミリー』は“寂しさへのラブレター” ブレンダン・フレイザーが語る転換点

ブレンダン・フレイザー、日本で変化した人生

 ハリウッドの第一線を走り続け、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『ザ・ホエール』で見事なカムバックを果たしたブレンダン・フレイザー。彼が東京を舞台にしたオール日本ロケの映画『レンタル・ファミリー』で演じたのは、落ちぶれた俳優として細々と暮らすアメリカ人のフィリップだ。異国の地で孤独と向き合うキャラクターに、彼は何を見たのか。日本での長期滞在で感じたことから、自身のキャリアのどん底、そして“父親になったこと”がもたらした人生の転換点まで、誠実な言葉で語ってくれた。

「この映画を経て、自分は全く違う人間になれた」

ーー『ザ・ホエール』のプロモーションでも来日されていましたが、『レンタル・ファミリー』では長い期間日本で撮影されていたかと思います。長期の滞在で改めて感じた日本の文化やカルチャーショックはありましたか?

ブレンダン・フレイザー(以下、フレイザー):発見というよりも、僕にとって改めてはっきりしたのは、日本の文化には「他人が必要としているものを、自分よりも先に考える」という精神が根付いていることです。それは日本人の皆さんにとっては普通のことかもしれません。でも、北米にルーツを持つ僕から見ると、今の世界情勢の中で日本にいることは、とても安全だと感じられました。映画の中のフィリップも同じ経験をしています。彼が7〜8年前にアメリカを離れたという設定を逆算すると、当時のアメリカの状況が見えてくる。彼は人生で求めているものを探しながら日本に辿り着き、ここでなら形にできるかもしれないという希望を抱いた。彼は歯磨き粉のCMである種の成功はしたけれど、それは望んでいた形ではありませんでした。

ーーフィリップは歯磨き粉のCMで成功して以降は思うような成功を収められず、落ちぶれた俳優として東京で暮らしていましたね。

フレイザー:正直、彼はあまりいい役者ではないと思います(笑)。役者とは、根本的には“本当のことではないもの”を表現する仕事ですが、彼の場合は“自分を欺いている”という問題を抱えていました。しかし、「レンタル・ファミリー」というビジネスに出会った瞬間、彼は“演じる”ことをやめるんです。演技という“人生を模倣すること”をやめたとき、彼は初めて人と繋がることができるようになった。お金以上に、本物の関係性を築けたことが彼にとって最大の報酬だったんです。HIKARI監督の素晴らしいところは、フィリップの感情の旅路をスピリチュアルな次元まで完結させてくれたこと。彼は最後に、ずっと外ばかり見ていた自分が、実は内側ですでに事足りていたんだと気づく。ほろ苦くも、僕が一番好きなシーンです。

ーーあなたもフィリップと同じ俳優ですが、フィリップを演じることによって、なにか自身の中で変化はありましたか?

フレイザー:ひとつ言えるのは、この映画を経て、自分は全く違う人間になれたということ。日本で映画を作ることができて、より良い人間になることができました。

ーー都会で生きる孤独や、誰かと繋がりたいという思いには、多くの観客が共感すると思います。自分は孤独を愛するタイプではありますが、この映画を観て、少し考え方が変わりました。

フレイザー:素晴らしい感想をありがとうございます。この作品は“寂しさへのラブレター”だと思っています。表向きの宛先は東京ですが、世界中の大都市で暮らす人々にとって共通の物語です。孤独を感じることは、いたって普通のこと。共演した柄本明さんが「寂しくたっていい。それは考える時間でもあるし、価値がある」とおっしゃっていました。生ける国宝である柄本さんの言葉や存在を直接受け止められたのは、本当に貴重な経験でした。

人生を変えた子どもの存在と『ザ・ホエール』

ーーフィリップは「レンタル・ファミリー」での仕事を通じて人生が変わりましたが、ブレンダンさん自身の人生を明確に変えた出来事はありますか?

フレイザー:子供を持って父親になったことです。それで人生のすべてが変わりました。自分が今なぜここにいるのか、存在理由のベースは常に子供にあります。俳優業に関していえば、ダーレン・アロノフスキー監督との『ザ・ホエール』ですね。パンデミックの最中、世界中が“存在の危機”に瀕していた時期にチャンスをもらいました。僕のキャリアも不確かな時期で、自分自身が一番の酷評家になり、「もう終わった俳優だ」という声を自分でも受け入れてしまっていました。

ーーその時期にどのように役と向き合ったのでしょうか?

フレイザー:キャリアの中で初めて、僕も“演技”をやめたんです。持てるものをすべて出しました。「もしこれが響かなかったらどうしよう」という最悪なシナリオも想像しましたが、結果として多くの方に届き、誇らしく思います。『レンタル・ファミリー』のフィリップも同じです。彼は自分の人生においても“振り”をしていたけれど、レンタル・ファミリーの一員として“レンタル”という嘘の役割を演じることで、皮肉にもそこに“真実”を見出し、自分を解放していく。それが彼にとっての贖罪にも繋がっているんです。

■公開情報
『レンタル・ファミリー』
全国公開中
出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマンシャノン眞陽ほか
監督:HIKARI
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/rentalfamily

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