現代にふさわしい“悲鳴”をどう作るか? Netflixオリジナルドラマ『スクリーム』の挑戦
ところで、ホラーとは時流にともない最も革新を余儀なくされるジャンルである。人の恐怖の根源は不変であれ、観客は常にどこかしら「新しさ」を期待する。近年でいえば、手持ちキャメラによるPOV撮影、ドキュメンタリー的な演出、はては3Dで飛び出す、などが思い浮かぶが、それらも定着してしまい、作品数こそ膨大だが、現状のホラー映画が抱える閉塞感は否定できない。ただ90年代初期もまた同様の状況であり、それを打破したのが映画版『スクリーム』だったのである。
ではこうした観点から、ドラマ版『スクリーム』は「新たな」ホラーと言えるのか。先述した現代的モチーフの活用はあるにせよ、そうとは言いがたい。むしろオーソドックスなストーリーや堅実な演出は「懐かしく」すらある。だがこの点にこそ、本ドラマの真価があるのではないか。
かつて毎週テレビには『13日の金曜日』のジェイソン、『エルム街の悪夢』のフレディ、そして『スクリーム』のゴーストフェイスたちが現れ人々を怯えさせていた。同時にそれらは完全な娯楽でもあった。そんな幸福な空気が90年代末にはまだ漂っていたのだ。しかし今はどうだろう。いつからかホラー映画は現実に起きる凄惨な事件の要因として危険物のように取り扱われることもあり、ずいぶんと大衆の日常から遠ざかったように思われる。
だからこそまた1度、あの恐怖と喜びがともにあったあの夜の“悲鳴”を響かせたい。ドラマ版でも総指揮を務めていたウェス・クレイヴン監督を筆頭にした製作陣の想いが、このNetflixオリジナルドラマ『スクリーム』には感じられるのだ。その結実として本作は好評を博しシーズン2の製作も決定している。ホラーファンのみならず、多くの視聴者が楽しめる良質なドラマである。
■嶋田一
ライター。1987年生まれ。
■作品情報
『スクリーム』
Netflixにて好評オンラインストリーミング中
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