現代にふさわしい“悲鳴”をどう作るか? Netflixオリジナルドラマ『スクリーム』の挑戦

 その歪んだ顔のマスクをご存知の方も多いだろう。96年公開され世界的に大ヒットしたホラー映画『スクリーム』。劇中人物らがホラージャンルの定番パターンを紹介・批評していく中で展開する大胆なメタフィクション性が売りとなりシリーズ化もされた。監督を務めたのは今年8月30日に惜しむらく亡くなったウェス・クレイヴン、70年代から独創的なホラー映画を放ち続けた巨匠である。

 そんな映画版から約20年、次なる“悲鳴”を作り出さんとするNetflixオリジナルドラマ『スクリーム』。その実態はいかなるものなのか。

 レイクウッドという町で美しい女子高生ニーナが惨殺される。その手口はかつて起きた猟奇殺人事件を彷彿とさせ、犯人であったブライアン・ジョーンズの影響がささやかれる。以降、主人公エマが通う高校を中心に事件が連続し、高校生らの隠された秘密も明らかになっていく…というのが基本のストーリー。映画版の設定を引き継いでいるが、丁寧な解説が行われるので初見の方でも特にギャップを感じず観ることができるだろう。今回はメタホラー性も薄れて、より正攻法な学園ミステリーとして出来上がっている。
 
 また本作では、単にスプラッター描写の残虐性によって恐怖を生むのでなく、キャラクターそれぞれに内在する悪意や秘密が重要視され、それらはSNSや動画配信というツールを利用して表出される。あるレズビアンのキャラクターの情事を盗撮した動画が投稿されるシーンでエピソード1が幕を開けることからも明らかなように、本作で鍵となるのは「プライバシー」であり、それがいとも容易く侵略可能な現代社会を告発する側面をもっている。劇中に「InstagramやFacebookでは完璧な笑顔や生活を公開しているが、私は君の真実を知っている」というセリフがあるが、こうした現代の日常生活への批評が具体的に行われ、スマートフォン・PC・ビデオカメラ、それらがナイフと同等もしくはそれ以上の鋭さをもってキャラクターたちに襲いかかる。

 プライバシーを暴かれ公にされることは社会的な死に直結する。いつの世もセレブリティたちはそんな被害に遭うことが常だったが、我々誰もがその危険性を秘めている現代ゆえ、リアルな恐ろしさがある。それはなにも被害者になる可能性だけでない。たいした罪の意識なく、インターネット上の動画や写真を閲覧、拡散することによって見ず知らずの他人を死にまで追い込んでしまう。我々はそんな加害者の1人にもなりうるということも、本作では暗示される。このような現代社会批判をミステリーホラー形式と巧く噛み合わせることでドラマとしてのクオリティが高められているのだ。

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