スーパー戦隊50年の歴史に幕『学研の図鑑 スーパー戦隊』から見る社会への影響

学研の図鑑スーパー戦隊から見る社会の影響

 1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』から始まり、テレビの前で世代を超えて親しまれてきたスーパー戦隊シリーズ。その50年という節目が「一つの区切り」として広く報じられる中、学研から刊行された『学研の図鑑 スーパー戦隊』が注目を集めている。単なるキャラクター図鑑ではなく、日本社会とヒーロー像の変遷をまとめた文化資料としての価値が浮かび上がっているからだ。

 長らく子ども達の朝を彩り続け、親子の記憶に刻まれてきたスーパー戦隊。だが、本シリーズは子ども向け娯楽であると同時に、その時代の社会問題や価値観、科学技術へのまなざしまで映し出す時代の鏡でもあった。その変遷を体系的に可視化する『学研の図鑑 スーパー戦隊』は、いまのタイミングだからこそ読まれるべき一冊といえる。

■「戦隊」は時代を映す

 スーパー戦隊は、いつの間にか“半世紀続いたシリーズ”という事実そのものが驚異的だが、なぜここまで生き残ったのか。その答えは、時代ごとの社会意識の変化を、ヒーロー像に反映してきたからだ。1970〜80年代は、高度成長の余韻と“科学万能”巨大ロボット、メカニック、近未来都市が注目され、科学=希望という時代の空気がそのまま作品世界に投影されていた。90年代になると個の強さとチームの多様性が注目される。社会が複雑化し、価値観が多様になった時代。戦隊メンバーの個性はより際立ち、「1人ひとりが違っていい」というメッセージが強まった。

 2000年代は、テクノロジー、環境問題、絆がフォーカスされる。インターネットの普及、エコ志向、仲間との絆といったテーマが多く描かれるようになり、子ども向け作品でありながら社会性がより強まっていく。2010年代以降は、家族、ジェンダー、多文化がテーマとなる。異文化共生、女性ヒーローの増加など、現代的な価値観が自然に作品に溶け込むようになった。こうした時代との呼応があるからこそ、スーパー戦隊は50年にわたり、現代の子どもへの社会を映す鏡でもあり続けたのだ。

 では、『学研の図鑑 スーパー戦隊』は何を描いているのか。その本質は「作品名やロボット名を網羅したデータ集」ではない。50年の戦隊シリーズを縦断し、ヒーロー像の変遷と社会背景を視覚的に整理し、文化史的に“戦隊とは何か”を捉え直す図鑑である。例えば、レッドの役割の変化、女性戦士の増加、ロボットデザインの進化など、「1つのヒーロージャンルがどう社会と関わってきたか」を読者が直感的に理解できる仕掛けが随所にある。

 子どもだけでなく、大人になった“戦隊世代”が読んでも発見が多いのは、図鑑としての網羅性よりも、文化の変化を“見える形”にする編集力の高さゆえだ。スーパー戦隊が残した社会的影響は大きい。

 スーパー戦隊の歴史にひとつの区切りが見える今、『学研の図鑑 スーパー戦隊』は“シリーズの終わりを前提とした、初めての体系的資料”として特別な意味を持つ。作品自体が続いているときには見えにくい、50年の文化史としての戦隊がこの図鑑でははっきりと示される。

 単なるノスタルジーではなく、「なぜヒーローは必要とされてきたのか」という根本的問いに立ち返るきっかけにもなる。スーパー戦隊が終わり、図鑑がまとめられ、時代が動こうとしている。だが、50年積み重ねてきた物語の役割は決して消えない。戦隊は、時代の悩みを映しながら進化する“現代の神話”でもあるかもしれない。

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