漫画家への原稿料は適正か? 『薬屋』『チェンソーマン』に続くIP創出へ「めちゃコミック」新編集部が熱論交わす

電子コミック配信サービス「めちゃコミック」が、新たな漫画編集部を立ち上げる。その挑戦の全貌を追ったドキュメンタリーがYouTubeにて次々と公開されている。
動画の中心人物として映し出されるのは、49歳で大手出版社・小学館を退社し「めちゃコミック」を運営する株式会社アムタスへ転職した豆野文俊氏。小学館では吉岡里帆主演でドラマ化された『健康で文化的な最低限度の生活』(柏木ハルコ)、柳楽優弥を主演にNetflixでの実写ドラマ配信が決定している、『闇金ウシジマくん』作者・真鍋昌平の最新作『九条の大罪』などを立ち上げ、「マンガワン」の編集長をも務めたヒットメーカーだ。10月30日に投稿された動画では新編集部の会議の様子が映像として収められた。本稿では動画の内容を振り返りたい。
「めちゃコミック」新編集部の強みと弱み
「編集者が足りない」。今夏アムタスへ入社した直後の豆野氏はそう語っていた。仲間探しから始まった編集部には元「週刊SPA!」(扶桑社)副編集長で『孤独のグルメ』(原作:久住昌之/画:谷口ジロー)や『アラサーちゃん』(峰なゆか)などを担当した牧野早菜生氏、オリジナルコミック企画編集チーム長の山内稔氏が参画。新編集部の方向性を議論する会議が始まった。
最初の議題は新編集部の現状分析。豆野氏は新編集部の強みとして、まず「めちゃコミック」が持つ圧倒的な販売力や膨大なデータを元にしたマーケット分析力、30〜50代の女性を中心とした読者層へのリーチ力を挙げた。さらに原稿料や広告に十分な予算を確保できることや編集者としての指導力、権利関係などを処理する専門部署があるため編集者が漫画制作に集中できる環境も強みだとした。
数々の強みが挙がった一方、弱みとして挙げられたのは新設部署ならではの課題だ。編集部の認知度が低いこと、編集者の人数が少ないこと。また「週刊少年ジャンプ」(集英社)のように読切作品で読者の反応を見てから連載化するという手法が取りづらく、いきなり連載作品を掲載するといった、実質的に一発勝負となってしまう点も課題として共有された。
「次の価値観」を描いた漫画家が覇権を握る
現状の課題を克服し、漫画家から選ばれる編集部になるためには何が必要か。牧野氏は一案として高い原稿料を支払うことが他誌との差別化、ひいてはブランディングに繋がるのではという考えを提示する。
ただ豆野氏は業界水準、もしくは業界水準以上の対価を支払うことは大前提としつつ、「漫画家は原稿料で生きているわけではない、(読者から)面白かった」と言われること、作品を通じて提示した価値観に対し読者から賛同や驚きが寄せられること、自分の描いたキャラクターが多くの読者から愛されることこそが、作家のモチベーションの源泉だと口にした
豆野氏は「今の時代は不幸慣れの時代」と分析する。具体例として挙げたのは『薬屋のひとりごと』(主婦の友社)だ。主人公・猫猫(マオマオ)のように不幸な境遇にありながらも淡々と生きる姿は「私の方が不幸」だと思っている人の多い世の中で新しい価値観を提示したと豆野氏。「海賊王になる」といった世界一大きな目標ではなく、その手前を描いた『チェンソーマン』のデンジしかり、世間的に新しい「次の価値観」を描いた漫画家が覇権を握ると力説する。
「人に何言われてもブレない(漫画への注目)が始まっている」「世間に左右されない人の尊さ」という豆野氏の話に続いて、牧野氏は「小確幸」という概念を提示した。「小確幸」は「小さいけれど確かな幸せ」を意味する、村上春樹が著書の中で作った造語。牧野氏によれば『孤独のグルメ』も小確幸を描いた作品なのだという。「小確幸」とともに、身近な人のために何かを行うといった「範囲の狭い利他行動」はセットで考えられると話した。
目指すは「漫画界のNetflix」
最後に話し合われたのは新編集部の今後について。目指す場所は「漫画界のNetflix」。具体的な目標は2026年4月に新レーベルを立ち上げるとともに、第1弾の作品7本をリリースすること。目標から逆算していくなか「もっと仲間が欲しい。編集者が入ると(作品の)幅が広がる」と豆野氏がこぼし「その人の経験でしか出てこないものがある」と牧野氏が言葉を続けた。
現在「めちゃコミック」では編集者の募集とともに、漫画オーディション「めちゃコン」を開催中。「めちゃコン」は鳥嶋和彦氏・石橋和章氏・佐渡島庸平氏が審査員を務めるほか、大賞作品には賞金300万円(ネームの場合は200万円)が贈られる漫画賞だ。「めちゃコミック」の強みを最大限に活かし、新たな才能と共に次の時代を創る。ゼロから始まった新編集部の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
























