漫画『ハチワンダイバー』作者の“熱さ”全開! 特撮バトル『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』に注目

東島丹三郎は仮面ライダーになりたいに注目

 ライデンフィルム制作による新アニメ『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』が、10月4日深夜からTOKYO MX ほかにてスタートする。同作は『エアマスター』や『ハチワンダイバー』で知られる漫画家・柴田ヨクサルによる渾身の特撮バトルマンガだ。今回は、同作の魅力やアニメ版の注目ポイントについて紹介していきたい。

 同作の主人公・東島丹三郎は仮面ライダーが好きすぎるあまり、本気で仮面ライダーになろうとしている人物。若い頃からひたすら身体を鍛え上げ、10年にわたって山籠もりに励んできた結果、気づけば素手で熊と互角に戦えるほどの実力を身に付けていたという。現在40歳となり、身の振り方を考え始めるものの、「仮面ライダーになる」という夢は決して捨ててはいない。

 そんなある日、覆面をした男たちがコンビニを襲撃する“ショッカー強盗”のニュースが報じられる。そして東島は、偶然にも目の前でショッカー強盗事件が起きるところに遭遇。お祭りの屋台で買ったお面をかぶって仮面ライダーに“変身”すると、渾身のライダーキックで偽ショッカーたちを成敗するのだった。

 さらに同作が面白いのは、真の敵として「本物のショッカー」や「本物の怪人」が登場すること。すなわち東島はたんなる“ごっこ遊び”ではなく、本気でヒーローになるための戦いに身を投じていく。

 しかもその過程で、東島以外にも特撮に人生を狂わされた人々が続々登場。電波人間タックルになりきる高校教師・岡田ユリコ、仮面ライダーV3が最強だと信じる島村一葉など、個性的なキャラクターたちが自分の命と魂を懸けて“本気のライダーごっこ”を行っていくのだ。

 東島はもちろん、仲間たちも“仮面ライダー愛”と正義への情熱に満ちており、羞恥心など持ち合わせていない。とくに東島は自分が子どもの頃から憧れていた仮面ライダーになれることを心の底から幸福だと感じていて、熱い涙を流しながらショッカーと戦う。そこに柴田ヨクサル節の効いた名言が次々飛び出し、ほかに見たことがないエネルギッシュなマンガとなっている。

“熱さ”を生み出す2つの要素

 とはいえ同作は底抜けに明るい作品というわけではない。実は登場人物たちは、幼い頃に父親に捨てられたり、家族をショッカーに殺されたりと、それぞれに壮絶な過去を背負っているからだ。

 さらに敵として立ちはだかる怪人たちはいずれも強大な力をもち、人間では到底太刀打ちできない相手に見える。しかし東島たちは絶望することなく、強い意志をもって仮面ライダーとしての戦いを繰り広げていく。

 すなわち仮面ライダーというフィクションの力によって過酷な現実を乗り越えていくという展開にこそ、同作の“熱さ”があるのではないだろうか。

 また東島が40歳という設定なのも、もう1つの“熱い”ポイントだ。東島は人生が後半戦に差し掛かり、もはやすべてが無駄だったかと思えてきたタイミングで、ショッカーとの運命的な出会いを果たす。そして仮面ライダーになるために鍛え上げてきた心身をその戦いに注ぎ込んでいく。ここには、「人生は何歳からでもリスタートできる」というメッセージが込められているように思えてならない。

 『仮面ライダー』への愛を爆発させつつ、人生の重みを引き受けてくれるという意味で、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』は間違いなく“大人向け”の作品と言えるだろう。アニメ版ではその熱量がいかにして表現されるのか、ぜひ注目してほしい。

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